表1 En4DVar法で推定したHill’48降伏関数およびSwiftの加工硬化則のパラメータの初期推定値と最適推定値3) パラメータを逆推定し、その結果として、実験データに近づくように数値シミュレーションの精度を向上できることを実証した。 図4 (a) DIC計測した対数ひずみ(xxとzz)と(b) 表1に示すパラメータの初期推定値および(c) 最適推定値を用いたシミュレーションで得られた対数ひずみ(xxとzz)の比較3) 4.金属板材の塑性加工の■■■計測データに基づく異方性降伏関数のパラメータおよび摩擦係数の逆推定■金属板材の成形シミュレーションの高精度化のためには、成形シミュレーションに用いる材料モデルのパラメータのみならず金型間や金型/ブランク間での摩擦係数を同定することが重要である。摩擦係数の測定には、摺動速度を再現した摩擦試験などが行われてきたが、本研究では、穴広げ成形試験およびDIC法で計測したひずみ分布データに対して、DMC-TPE法に基づく非逐次データ同化を適用し、Yld2000-2d降伏関数12)のパラメータ6)のみならずよび摩擦係数7)を逆推定する技術を開発した。 4 1■穴広げ成形試験■データ同化計算に必要な実験データを得るために、アルミタウム合金板の穴広げ成形試験とDIC法によるひずみ場計測を実施した。供試材は、公称板厚は1.0 mmのA5052-Oアルミタウム合金板を用いた。図5に、穴広げ成形試験 ここで、は相当応力、pは相当塑性ひずみである。C、0、およびnは、材料の加工硬化特性を表すパラメータである。Abaqus/Standardに、Hill’48降伏関数およびSwiftの加工硬化則を導入するために、ユーザーサブルーチンライブラリであるunified material model driver for plasticity (UMMDp)11)を用いた。本研究では、降伏関数および加工硬化則に含まれる合計9つのパラメータ (F、G、H、L、M、N、C、0、n) を、En4DVarによる推定対象とした。その他の計算条件は、文献3)を参照されたい。 図3に、評価関数J(x0)の最小化計算におけるJ(x0)の値の推移を示す。繰り返し数の増加とともにJ(x0)が単調減少することから、最小化計算が適切に実施されたことがわかる。表1に、x0bの確率密度関数の近似におけるアンサンブル平均 (つまりパラメータの初期推定値) と、J(x0)の最小化計算の終了時点で得られた、パラメータの最適推定値を示す。いずれのパラメータも、負の値などの明らかに不合理な解になることなく、尤もらしい推定値を得た。 図3 評価関数の最小化計算の結果3) 図4に、DIC計測した試験片表面の対数ひずみの分布と、パラメータの初期推定値および最適推定値を用いてそれぞれ実施した数値シミュレーションの結果を示す。初期推定値を用いて実施した数値シミュレーション、すなわち、En4DVar法によるパラメータ推定前の数値シミュレーションでは、くびれが発生などの実験結果を再現できていない。一方で、最適推定値を用いた場合には、21秒以降でくびれが発生することなど、実験で観察された変形挙動が再現されている。したがって、材料モデルに含まれる9つのParameter Initial guess value C [MPa] 0 [-] n [-] F [-] G [-] H [-] L [-] M [-] N [-] 3.632 × 10−3 Optimally estimated value 543.6 357.1 3.728 × 10−3 0.2518 1.018 0.996 1.010 3.024 2.977 2.953 0.1075 0.984 1.097 0.867 3.015 3.476 2.665 − 88 −
元のページ ../index.html#90