天田財団_助成研究成果報告書2024
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bxは系の初期状態と推定対象のパラメータの初期推定値を含むベクトルである。BとRtは、それぞれ背景誤差共分散行列と観測誤差共分散行列であり、それぞbとytに含まれる誤差の大きさを表す。Htは、数値シミれx0ュレーションで計算した状態量と実験データを比較する−F2)+22=(p+n)(zzH2zxC03.単軸引張試験とDIC法によるひずみ分布データに基づく異方性降伏関数のパラメータ逆推定データを、材料モデルのパラメータを逆推定するために用いた。図1(a) 単軸引張試験に用いたドッグボーン型のA5052アルミタウム合金試験片の形状。(b) 単軸引張試験とDIC計測に用いた実験装置3)図2DIC法により計測された単軸引張試験中の試験片の表面での変位uzとひずみzzの分布3)3 2・データ同化結果汎用有限要素解析ソフトウェアAbaqus/Standardを用いて、単軸引張試験を模擬する数値シミュレーションとデータ同化を実施した。試験片のうち、つかみ部を除いた部分を1/4モデルを用いて解析を行った。低減積分ソリッド要素(C3D8R)を用いて、有限要素モデルを3430要素で分割した。境界条件は、単軸引張試験を模擬するように設定したが、数値シミュレーションでのひずみ速度は、実験条件よりも大きく設定した。しかしながら、アルミタウム合金のひずみ速度依存性は一般に小さいため、その影響は無視できると考えた。物性値として、ヤング率は70 GPa、ポアソン比は0.33とした。塑性特性は、塑性異方性を考慮し、次式のHill’48降伏関数を用いた。ここで、ij(i, j= x、y、z) は、Cauchy応力テンソルの成分である。F、G、H、L、M、Nは、材料の塑性異方性を表すパラメータである。材料の加工硬化は、等方性を仮定し、次式により表されるSwiftの加工硬化則によって記述した。yy()G+−xxzz2LM22++yzここで、0ために、時間内挿や空間内挿を行う観測演算子である。非逐次データ同化では、評価関数J(x0)を最小にするx0が、求めるべき最適推定値である。En4DVar法を用いたデータ同化においては、J(x0)の勾配J(x0)を用いた変分法によるJ(x0)の最小化計算、最小化計算によって更新されたx0に含まれるパラメータを用いた数値シミュレーションの実施、および新たに実施した数値シミュレーションの結果に基づくJ(x0)の再計算を繰り返すことで、最適推定値を探索する。DMC-TPE法を用いたデータ同化においては、J(x0)を計算することなく、ベイズ最適化を用いて評価関数J(x0)を最小化する。このため、DMC-TPE法を用いれば、様々な問題にも容易に実装することが可能である。単軸引張試験の結果とDIC法で計測したひずみ場の実験データを用いて、En4DVar法を用いた非逐次データ同化によって材料モデルのパラメータや材料の変形状態を推定する技術を開発した。本研究では、開発した技術の実証のために数値実験1,2)を実施したほか、アルミタウム合金を対象としてHill’48降伏関数の6つのパラメータとSwiftの加工硬化則の3つのパラメータを逆推定した3,4)。以下では後者の結果を示す。3・ 1単軸引張試験とデジタル画像相関法によるひずみ分布計測材料モデルのパラメータ推定に必要な実験データを取得するために、図1に示すようなA5052アルミタウム合金のドックボーン型試験片を用いた単軸引張試験を実施し、DIC法によるひずみ分布計測を行った。この計測のために、試験片表面にはスプレー塗料によってスペックル(ランダム)パターンを塗布した。単軸引張試験は、島津製作所製の卓上形精密万能試験機オートグラフAGS-X 10 kNを使用し、試験片の上部に引張速度0.5 mm/sで変位を与えた。DIC法によるひずみ計測のために、The Imaging Source社製の産業用CMOSカメラDFK33UP1300を2台用いて、フレームレート10 Hzで撮影を行った。取得した画像の組をオープンソースライブラリであるMultiDIC10)を用いて解析することで、試験片表面の変位分布およびひずみ分布を算出した。図2に、DIC計測で得られた試験片表面に生じるz方向変位および対数ひずみの分布を示す。試験開始後の19 秒以降に、試験片平行部での変位分布が不均一となった。その後の21秒以降では、試験片中央部にくびれが発生し、進展した。本研究では、万能試験機のロードセルから得られる試験荷重と、図2に示す変位およびひずみ分布の計測 (3) (2)− 87 −()−yyxx2N21+=xy

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