■■■ J()x0=xtt=0−xT)BHt()−0(x0−x)+T(Ht()−)()1−Rt1−ytxtb0ytxtb0② 金属板材の塑性加工でのDIC計測データから異方性降伏関数のパラメータおよび摩擦係数を逆推定する技術の構築5~7) (1212 (1)■キーワード:プレス加工,材料モデリング,データ同化■■1.研究の目的と背景■プレス加工技術は、我が国のものづくり産業を支える最重要技術のひとつである。特に、自動車産業を背景として、金属板材のプレス加工技術の高度化は、国際競争力の維持のためにも必須の研究開発課題と位置付けられる。しかしながら、我が国では労働人口減少が加速するため、デジタルトランスフォーメーション(DX)の波に乗って、プレス加工技術のデジタル化や人工知能(AI)、Internet-of-Things (IoT)の活用は急務である。幸いなことに、塑性加工分野では、センサーデータを活用したプレス加工制御、加工不良検出、金型内部の見える化が長年研究されており、これまで開発されてきたセンシング モモタタリング技術を活かせば、塑性加工分野はプロセスインフォマティクスで他分野を牽引する大きな可能性を秘めている。 塑性加工分野では、有限要素法に基礎を置くコンピューターシミュレーションの利用は活発であり、プレス加工の仮想化が進められてきた。今後さらに求められることは、超高精度なプレス加工シミュレーションを短時間で実現する技術 (いわばデジタルツイン)の確立である。そのためには、プレス加工シミュレーションに使用する降伏関数とそのパラメータ(以後、これらをまとめて材料モデルと記す)を簡易、かつ、正確に同定する材料モデリング方法の確立が必要である。材料モデリングの方法は、例えば多軸応力試験を利用する方法もあるが、特殊な試験装置や高度なスキルを必要とするなどの課題がある。さらに、多軸応力試験を利用して、材料モデルが同定できたとしても、塑性加工には摩擦状態などの不確定要素が多く、プレス加工シミュレーションの高精度化には容易ではない。特殊な多軸応力試験機を必要とせず、簡易な方法で、プレス加工シミュレーションを超高精度化するための材料モデリングを行い、同時に、プレス加工での未知状態(金型内部での摩擦状態など)を高精度に推定できる新しい手法が必要である。 そこで本研究では、ベイズの定理に基づくデータ同化を用いて、上記問題を解決することを目指した。データ同化は、地球科学、特に気象予報等の精度向上のために実用されており、数値シミュレーションと実験を統計数学で結びつける。これにより、実測できない状態の推定や未知パラメータの推定に有効である。塑性加工分野では、データ同化の適用例は少ないが、前述通り、センシング モモタタリ東京農工大学■大学院工学研究院■先端機械システム部門■(2021年度 重点研究開発助成 課題研究 AF-2021002-A2)■教授■山中■晃徳■ング技術が発展した塑性加工分野では、データ同化に使用できる実測データが豊富に存在し、これを利用することで、材料モデリングの簡易化やプレス加工シミュレーションの超高精度化を実現できる。よって本研究の目的は、データ同化を活用した材料モデリング手法と超高精度プレス加工シミュレーション技術の開発とし、その技術を産業界で利用しやすい形(ソフトウェア等)で提供することとした。 上記目的を達成するために、以下の研究項目を実施し、それぞれについて関連学会での研究成果発表および査読付き学術論文に発表した。 ① 単軸引張試験とデジタル画像相関法(DIC)による計測データから異方性降伏関数のパラメータを逆推定する技術の構築1~4) 次章以降では、上記①と②について報告する。 2.データ同化方法■本研究では、非逐次データ同化アルゴリズムであるアンサンブル4次元変分法(En4DVar法)8)とDMC-TPE法 9)に基づくデータ同化手法を用いた。どちらのアルゴリズムを用いた場合でも、時刻tにおける系の状態および推定対象のパラメータを含む拡大状態ベクトルxtと、実験データを表す観測ベクトルytを定義し、xtおよびytを確率変数と見なして、ベイズの定理に基づきxtの確率密度関数p(xt)の推定を行う。そして、ある時間範囲t = 0 ~ tendにおける実験結果と数値シミュレーション結果とのデータミスフィットを表す評価関数J(x0)を最小にするように、数値シミュレーションの初期条件やパラメータを推定する。評価関数J(x0)は、xtおよびytの確率密度関数がガウス分布に従うとする仮定のもと、最尤推定法に基づいて導出され、次式で表される。 end− 86 −データ同化を用いた金属板材の材料モデリングと■超高精度プレス加工シミュレーションの実現■
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