2.膜の初期形状を2次側方向に深さをもった皿型形状にすることにより,水素透過中の過度な変形を抑制することができる.3.両側に押え板を用いる深絞り成形を行うことで,し4.皿型形状に成形した水素分離合金膜を用いて水素透4.繰り返し水素透過試験図17(a)に成形後,水素透過前の水素分離膜を示す.5.結言謝辞参考文献図16にその時に金属箔に生じている(a)子午線方向応力,(b)円周方向応力の分布を示したが,ダイス側押え板が1t SPCCのほうが0.5t SPCCより子午線方向の引張り応力が高く,また円周方向の圧縮応力が低くなっていることがわかる.ダイ肩部とパンチ肩部で面圧が加わることで,壁部には子午線方向に引張応力が作用し,相対的に周方向の圧縮応力が低減されたため,しわ発生が抑えられたと考えられる.図16パンチストローク3mmにおける応力分布(パンチ側押え板:1t SPCC)最後に成形された合金膜を用いて繰り返し水素透過試験を行い,耐久性の検証を行った.SUS304箔の実験においてはフランジ部にわずかにしわが生じるが壁部の形状が最も良かった,パンチ側,ダイ側ともに1t SPCCの条件で直径100mm,厚さ0.1mmのV-10at%Feの合金膜を成形し,それを水素透過試験デバイスに組み込んだ.その後,昇温(623K),水素導入(0.4MPa),水素停止・減圧,冷却,割れ確認のサイクルを繰り返した.しわなく,目的の形状に成形されている事がわかる.図18は透過試験前後の合金膜壁部のプロフィール測定結果を示したものである.1回目の透過試験においては膜形状の変化が大きいが,2回目以降は形状の変化はほとんど見られず,安定している事がわかる.10サイクルの試験終了後の合金膜の外観を図17(b)に示す.この繰り返し試験を継続した結果,50回目まで耐えることがわかり,大幅な耐久性の向上を達成できた.(a)子午線方向応力分布(b)円周方向応力分布1)小島由継:表面科学,3366-11(2015),583-588.2)K. Hashiほか:J. Alloys Compd,336688(2004),215-220.3)吉永ほか:まてりあ,5577-1(2018),23-25.4)G.5)Y. Matsumoto:Metall.J.,(2010),LXIII,74-78.− 84 −固溶水素による格子膨張を模擬したFEM解析により,平膜型水素分離合金膜の水素透過時のしわ発生抑制に向けた方案の検討を行った.また得られた形状に合金膜をしわなし成形する方法を開発した.1.下部ガスケットにRを付与することによって,膜の円周方向への変形や急激な曲げ変形を緩和することができる.わのない成型法の開発に成功した.過試験を行い,大幅な耐久性の向上を確認した.本研究の実施にあたり公益財団法人天田財団より重点研究開発助成課題研究(AF-2020003-A3)を賜りました.ここに深く感謝申し上げます.Alefeld:Hydrogen in Metals I,Springer, Berlin,(1978),64-74.(a)透過試験前 図17水素透過試験前後の膜の状態図18水素透過前後の合金膜形状の変(b) 10サイクル透過試験
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