(∆θ=1306K)(∆θ=656K)2サイクル目,水素透過中1次側:0.4MPa2次側:0.1MPa623.15K1次側:0.18(H/M)2次側:0.09(H/M)(相当温度増分(∆𝜃𝜃𝜃𝜃))2・1固溶水素による格子膨張の模擬方法水素分離合金膜の水素透過時の変形挙動を解析上で表現するためには,水素分子の結合・解離の設定や膜内部での拡散等の条件設定が必要となり,結果の算出までにより多くの時間を要する複雑な解析となる.そこで,本研究では固溶水素による格子膨張を仮想的な熱膨張に置き換え,以下に示すようにして模擬を行った.1) 膜への固溶水素濃度𝐶𝐶𝐶𝐶を仮定する.に対応する体積膨張量∆𝑉𝑉𝑉𝑉を算出する.∆𝑉𝑉𝑉𝑉=𝑎𝑎𝑎𝑎𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀3−𝑎𝑎𝑎𝑎𝑀𝑀𝑀𝑀32=2.571×𝐶𝐶𝐶𝐶3)式(2)より体積膨張率𝛽𝛽𝛽𝛽を算出して対応する相当温度増分∆𝜃𝜃𝜃𝜃を求め,水素透過時の温度からさらに上記の温度増𝛽𝛽𝛽𝛽=∆𝑉𝑉𝑉𝑉𝑉𝑉𝑉𝑉=2∆𝑉𝑉𝑉𝑉𝑎𝑎𝑎𝑎𝑀𝑀𝑀𝑀3=(1+𝛼𝛼𝛼𝛼∆𝜃𝜃𝜃𝜃)3ここで,∆V:一原子あたりの体積膨張量,𝑎𝑎𝑎𝑎𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀:水素固溶時の格子定数,𝑎𝑎𝑎𝑎𝑀𝑀𝑀𝑀:V族原子単体の格子定数,C:固溶水素濃度,𝛽𝛽𝛽𝛽:体積膨張率,𝛼𝛼𝛼𝛼:線膨張係数,∆𝜃𝜃𝜃𝜃:相当温2)Alefeldら4)によって提唱された,BCC構造下のⅤ族金属における水素固溶による体積膨張量と固溶水素濃度の関係から導かれた式(1)を用いて,仮定した固溶水素濃度分を加える.度増分である.2・2解析条件解析に用いた各条件を表1に示す.解析にはCOMSOL Multiphysics Ver.5.6を用い,2次元軸対称モデルを使用した.膜材料は吉永らによる実験3)と同様にV-10at%Feとし,水素透過時の温度は623Kとした.松本らによる純VのSP試験の結果5)より,膜中の水素固溶濃度がおよそ0.2 (H/M) 以上になると脆性遷移することが報告されていることから,水素固溶濃度が0.18 (H/M) となる圧力をPCT曲線6)より求め,1次側圧力を0.4MPaとした. 解析サイクルは,①膜を室温から水素透過時の温度まで昇温,②ガス圧,固溶水素濃度に対応した相当温度増分を膜の1次側,2次側表面にそれぞれ与え,保持(以下,水素透過中),③ガス圧と温度を初期状態まで同時に下げる(以下,透過後)とし,水素分離合金膜の変形挙動や応力・ひずみ分布を求めた.2・3平膜形状の場合の水素透過サイクルにおける変形挙動最初に吉永らの行った水素透過試験7)において,しわが発生した平膜モデルについて,FEM解析を行った.図3に示す解析モデルについて (a)水素透過時の温度まで昇温時,(b)1次側にガス圧0.2MPa,水素濃度0.09H/Mまで付与した時,(c)水素透過中,(d)透過後,(e) 2サイクル目における水素透過中,(f) 2サイクル目における透過後の,膜の変形挙動を図4に示す.昇温に伴う熱膨張で1次側に変形した膜 (a)が,ガス圧力の上昇とともに2次側に変形し,下部の支持体(サポート)に接触してさらに固溶水素濃度の増加に伴う膨張でガスケット近傍の膜が1次側にまで膨らんでいる事がわかる(b).ガス圧と温度を戻し稼働とシャットダウンが1サイクル終了した時点(c)においても膜は元の平膜形状に戻らず,塑性ひずみが生じていることがわかる.2サイクル目(d),(e)においても膜の座屈モードは若干異なるが,同様な繰り返し変形を受けている. 1サイクル目の水素透過中における膜に生じる円周方図4 しわ発生モデルにおける水素透過中および透過後の変形挙動向応力分布および相当ひずみ分布を図5に示す.膜の1次側表面はほぼ全面圧縮となっているが,ガスケット近辺において面外変形による曲げにより円周応力が変動していることがわかる.また膜がガスケットによって拘束される直近においては大きな圧縮応力となっている.本解析は軸対称2次元解析のため円周方向の座屈が解析上生じないが,実際の板においてはこの部解析ソフト解析モデル膜材料ヤング率Eポアソン比ν変形抵抗𝜎𝜎𝜎𝜎�摩擦係数μ線膨張係数αガス圧水素透過時の温度T固溶水素濃度表1 解析条件(b)水素透過中(一次側ガス圧0.4MPa, 623K)(e)水素透過後(一次側ガス圧0MPa, 273K)(a)水素透過温度(623K)まで昇(c)(d)2サイクル目,水素透過後図3 しわ発生モデルCOMSOL Multiphysics ver 5.62次元軸対称V-10at%Fe149GPa0.31610×𝜀𝜀𝜀𝜀0.382MPa8.4×10−60.1/K(1)(2)− 80 −
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