天田財団_助成研究成果報告書2024
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重荷造鍛の析解MEF度強品形成の析解MEF-/-/カートリッジヒータおよび熱電対を挿入し,それぞれ独立して温度を制御できるものとした.熱間鍛造では,被加工材の下型天面からの突き出し部の据込みにより頭部を成形した.また引張試験については,成形品の首下を保持できる治具を製作し,胴部をチャックすることで行った.被加工材はSD295異形棒鋼で,購入先・購入時期により組成の異なるA(β=1.26), B(β=1.46), C(β=1.60)の三種を準備した.なお,βは組成から計算できる焼入れ性を示すパラメータ9)で,βが大きいほど焼入れ性が良いものを示す.スライド速度Vsは,4 mm/sおよび5 mm/s,被加工材温度Twpは,1,050 ℃,1,100 ℃,1,150 ℃,金型温度Tdieは50 ℃,100 ℃,150 ℃,200 ℃とし,下死点保持時間tholdは,0 s、1.0 s,2.5 s,5.0 sで変更できるものとした. 以上の条件で,上型の下死点保持の時間を調節することで,成形品の強度を向上させることを試みた. 3・3 実験およびシミュレーション結果 た.これは,温度の高い被加工材が,温度の低い金型内で急冷され,保持時間が長いほどマルテンサイトの変態割合が高くなる温度まで,冷却ができたためである.他の鍛造条件についてもFEM解析を行い,被加工材の組成や鍛造温度および金型温度により,マルテンサイトの変態割合が高くなる下死点保持時間は異なることを明らかにした. すべての被加工材組成および鍛造条件で,実験とFEM解析の結果を比較したものを図12に示す.縦軸にはFEM解析により求めた(a)強度,および,(b)鍛造荷重を正規化した値,横軸には実験により求めた強度および鍛造荷重を正規化した値を示した.さまざまな条件で比較した場合でも,概ね20%程度の誤差でFEM解析により実験結果を予測できている.これにより,FEM解析結果を用いた代理モデルを構築し,強化学習時の学習用データとして用いることで学習を高速化した. 3・4 強化学習を用いた熱間鍛造条件の最適化 成形を,Step-1:成形前,Step-2:成形開始時,Step-3:下死点の3つのステップに分ける.各ステップの環境として,Step-1では被加工材の組成および温度と金型温度,Step-2およびStep-3では被加工材の温度および金型温度を観測する.行動については,Step-1で待機時間0 s,5 s,10 s,Step-2で成形速度4 mm/s,5 mm/s,Step-3で下死点保持時間0 s,1 s,2.5 s,5 sをいずれか選択する.Step-1の待機時間とは,成形前にプレス動作を待機する時間を指し,金型上で1 s待機するごとに10 ℃,被加工材温度が低下するものとした.この温度低下は実験により求めたものである. 次に,報酬について説明する.Step-1およびStep-2では負の報酬として待機時間や成形に要した時間に比例しFEM解析結果の一例を図11に示す.被加工材B,スライド速度5 mm/s,被加工材温度1,000 ℃,金型温度100 ℃で解析を行った結果である.下死点保持を行う場合,保持時間が長いほど,頭部のマルテンサイトが増加し100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 thold =0 s ヒータ 被加工材 ヒータ 下型 マルテンサイト率 /% 図11 マルテンサイト率に及ぼす下死点保持時間のたもの,Step-3では負の報酬として保持時間および成形荷重の大きさに比例したもの,および,正の報酬として成形品の強度に応じたものを与えた.負の報酬には係数(以降,罰則係数)を乗ずることでその影響の大きさを評価できるものにした.また,成形品の強度に応じた正の報酬としては,Reward-1: 強度の大きさに比例した報酬を与える方法と,Reward-2: 一定以上(60 kN以上)の強度で定額の報酬を与える方法の二種類について検討を行った. 強化学習の結果評価として,学習済みの行動モデルの評25 mm 2.4 mm 1.0 s 被加工材A被加工材B被加工材C上型 熱電対 ノックアウト 図10 熱間鍛造と引張試験の概要 影響 (被加工材 B, Vs =5 mm/s, Twp =1000 °C, Tdie =100 °C) 図12 FEM解析精度の検証 2.5 s 5.0 s 被加工材A被加工材B被加工材C実験の鍛造荷重/-(b) 鍛造荷重 治具 成形品 チャック 1.00.80.60.40.20.00.00.20.40.60.81.0実験の成形強度/-(a) 成形品の強度 − 70 −(a) 熱間鍛造 1.00.80.60.40.20.0(b) 引張試験 0.00.20.40.60.81.0

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