天田財団_助成研究成果報告書2024
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数個 開始 初期化 t =0 個/86420123456789---〇〇--〇〇-われる.また図より,パルス開始位置が,0.2 mmあるいは0.3 mmの場合にパンチのずれ量が小さくなることがわかる.また,パルス幅の大きさについて調べた結果,パルス幅を小さくするほど,パンチのずれ量は小さくなり,パルス幅を0.05 mmとすることでパンチのずれ量を0.01 mm程度まで小さくできることがわかっている. 2・4 知能化実験結果 成形実験は,1,300 kN油圧プレスを用いた.スライド速度は5 mm/sとし,スライドモーションは,スライド速度一定のモーションと,FEM解析で求めたパルス開始位置0.3 mm,パルス幅0.05 mmのパルスモーションとした.なお,パルス動作はストローク1.0 mmで終了し,その後は速度一定のモーションとした.図7に成形実験の結果を示す.それぞれ10個の成形品のうち,パルス加工を行わない場合,良品は2個であったが,パルス加工を行うことで8個まで向上した. 次に,知能化の手順を以下に述べる.成形初期におけるパンチの弾性ひずみをデータロガーで取得し,推論を行うことで成形の良否を推論する.その推論結果に応じて所定の電圧をアナログ電圧出力器より出力する.電圧値は,成形不良になる推論結果であれば,プレス機がモーション変更(パルス加工に変更)を判断するトリガ電圧とし,成形良品になる推論結果であれば,トリガ電圧未満とすることで,モーション変更を行わず下死点までスライドを進行させる. 知能化プレス成形の検証結果を図8に示す.10個の成形品では,割れ,しわ,大きな曲がりは確認されなかった.また,10回の成形のうち,パルスの発動は4回あり,そのうち1個は∆hが4.74 mmと大きいが,それ以外は∆hが小さく良好な成形であった.なお,パルス未発動時の成形時間は,8 sに対して,パルス発動時の成形時間は29 sである.10回の成形において,すべてパルスを用いた成形とすると290 sを要することに対して,知能化による選択的なパルス発動によって,合計164 sの成形時間となった.知能化による選択的なパルス発動で,不良率を低減できるだけではなく,成形時間を大幅に短縮できた. 3.強化学習を用いた熱間鍛造の最適化3) 3・1 強化学習について 強化学習は,機械学習の手法のひとつであり,変化する環境の中で,試行錯誤を通して最適な行動戦略を獲得してゆくための枠組みである7).図9に強化学習の概要を示す.環境における状態を観測し,エージェントと呼ばれる行動を決める役割の部分が行動を選択する.適切な結果をもたらす行動には正の報酬(Reward)が与えられ,不適切な結果をもたらす行動には罰として負の報酬が与えられることで,最終的に最も高い報酬が得られる行動の選択を目的に学習するものである. 3・2 実験方法 熱間鍛造では,被加工材の組成および鍛造温度や冷却速割れしわ曲がり良品パルスなしパルスなし(Δh = 11.5 mm)(∆h= 11.5 mm)曲がり良品パルスありパルスあり(Δh = 3.2 mm)(∆h= 3.2 mm)観測 状態 s(t)→観測 x(t) 状態の更新 報酬 r(t) 最終状態の判定 done(t) 次の状態 s(t+1) → 観測 x(t+1) 繰り返し計算 t ← t+1 度によって成形品の強度が変化する.特に,機械式定着鉄筋8)では,熱間鍛造後の熱処理は行わないことが一般的であるため,それらの要因による強度の変化が大きい.成形品の強度安定と鍛造時間の短縮を目的に,強化学習を用いた熱間鍛造条件の最適化を行った. 棒状の被加工材を,機械式定着鉄筋を模擬した形状に熱間鍛造し,金型上の下死点保持で焼入れを行う第一工程と,成形品の強度を引張試験により求める第二工程について,実験およびFEM解析を行った.熱間鍛造試験および引張試験の概観を図10に示す.鍛造の上型および下型には,図7 成形実験の結果 図8 知能化プレスの成形結果 環境 図9 強化学習の概要 エージェント 行動 行動 a(t) 学習 NNW 10No.パルス発動Δh /mm102.341.610.502.072.641.473.104.742.021.91− 69 −1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

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