天田財団_助成研究成果報告書2024
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… … … … … … キーワード:機械学習,鍛造,FEM解析 この人材不足を打破する方法の一つとして,塑性加工の分野においては人工知能(Artificial Intelligence,以降AI)の活用が進められている.AIを活用することで,加工条件の最適化や不良発見に要する作業時間を大幅に短縮することができる.著者らは,サーボプレスなどのスライドモーションをコントロールできるプレス機をAIと組み合わせて活用することで,知能的なスライドモーション制御を実現できると考えている.知能的なスライドモーションは,言わば匠の技に相当し,状況に応じて叩き方を変えるという熟練技術をプレス機に搭載することを想定している. 本研究では,(1)プレス機械をAI対応に改造,(2)畳み込みニューラルネットワーク(Convolution Neural Network,以降,CNN)を用いたインパクト成形の知能化,(3)強化学習を用いた熱間鍛造の最適化に取り組んだ.本稿では紙面の都合上,(2)および(3)について抜粋した結果のみ報告する.それぞれの詳細については,既発表論文2),3)を参照いただければ幸いである. 2.CNNを用いたインパクト成形の知能化2) 2・1 CNNについて Neural Network(以降,NNW)とは,図1に示すように信号の伝達により,入力に対する出力結果を求める数値モデルである4).入力に対する出力の関係を事前に学習することで,未知の入力データから出力結果を予測できることが特徴である.この予測のことを機械学習の分野では推論と呼び,本稿でもそのように記載する. 近年,画像認識においては,このNNWを発展させ,畳み込み演算を用いたCNNが推論精度の向上に大きな成果を上げている5).一般的なNNWでは,全結合層と呼ばれるすべての入力データを結合するネットワークで構成されていることに対して,CNNでは,空間的に近い情大阪産業技術研究所 和泉センター 加工成形研究部 (2020年度 重点研究開発助成 課題研究 AF-2020001-A3) 主任研究員 四宮 徳章 要素数 4×65 4 65 畳み込み⇒バッチ正規化⇒ReLU関数⇒Max pooling処理 4×4×16 Out map数:4 4 4×4×4 16 全結合処理 ReLU 4×4×1 2 Softmax 1.研究の目的と背景 プレス加工や鍛造をはじめとした製造業の現場では,近年,人材不足が問題になっている.特に,2002年以降,全産業の就業者に対する製造業の就業者数の割合は低下を続け,2002年には19.0%であったものが2022年には15.5%まで低下している.さらに製造業における若年就業者数は,この期間に384万人から255万人まで減少している1). 入力1 入力2 入力k 入力n 入力層 − 67 −図2 畳み込み演算を用いたNNW(CNN)の概要 報の関連性を考慮したネットワークで構成されている.この空間的な情報の関連性を,本稿では,時系列の情報の関連性に利用できると考え,塑性加工中の金型の弾性ひずみなど時系列データの認識に用いることを試みた. 本稿で用いたCNNを図2に示し,概要を説明する.まず,準備した4×65画素の画像(本稿では,4チャンネルのひずみの時系列データ(65サンプリング)を画素に並べたものとして扱った)に対して,4枚の異なるフィルタを用いた畳み込み演算と,1×4画素ごとの特徴量を抽出するMax pooling処理により,4×4×16へと変換する.同様の処理をさらに2回行い,最後に全結合層を用いることで2要素までデータ量を圧縮し,それぞれの数値の大きさで良品か不良品かを分類した. 図1 NNWの模式図 隠れ層 出力1 出力2 出力i 出力m 出力層 プレス機自らが考えて動く 機械学習を活用した知能化成形技術の構築

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