1)M. Bendsoe, N. Kikuchi: Generating optimal topologies in structural desing using a homogenization method, Comput. Methods. Appl.Mech. Engrg., Vol. 71, (1988), pp. 197-224.2)松井和己, 寺田賢二郎, 西脇眞二, 石橋慶輝: 有限変形を伴う構造物に対するconsistent トポロジー最適化手法, 日本計算工学会論文集2001巻(2001), 7.結言謝辞参考文献Fhであり,縦軸はコイニング状態における穴底の主応力1とダイの上面の水平方向変位xである.水平方向荷重Fhの増加にともない穴底部に生じる主応力1は顕著に減少する.また,キーホールの存在によりダイ上面は左右に開くが,側面から荷重を付与することによって,この変位xも抑制可能である.この解析ではスリット部[A]にスペーサなどの挿入を仮定していないため,大きな水平方向荷重Fhが作用すると,水平方向変位xが負となる,つまり,キーホール部分が閉じるように変形する.図16側面からの水平方向荷重付与の効果張力を付与したピアノ線をダイスに巻き付けることにより水平方向荷重Fhを作用させることとした.直径0.2mmのピアノ線を用い,引張強さの1/5の張力65.4Nにて巻き数を730とし,図16の赤破線[B]の状況,つまり,水平方向荷重Fh= 2.43 kN/mmを実現することとした.さらに巻き数を増やすと効果は増大すると考えられるが,手作業により巻きつけたため,ピアノ線の巻き数を増やすことが困難であった.ピアノ線によって補強されたキーホールダイの疲労試験結果をダイ外観とともに図17に示す.ここでは,[A]にて示すスリット部にはスペーサを挿入し,ピアノ線による水平方向荷重負荷によって,ダイが内側に変形することを防止している.[B]にて示す静的破壊試験では,従来ダイの1.6倍の耐荷重を示した.また,106回数までの広範囲において耐荷重は,従来ダイに比べて,著しく向上した.図17疲労試験結果(ワイヤ巻付け効果)図18に静的破壊試験における破断状況を示す.通常ダイでは,V溝底より亀裂が生じた.2つ穴ダイでは,溝底,或いは,涙形状の穴から亀裂が生じていたが,先行して亀裂が生じた場所は特定できなかった.キーホールダイでは,穴部底側から亀裂が生じていた.ワイヤを巻き付けたキーホールダイでも同様に亀裂が生じていたが,ダイの飛散は見られなかった.本報告書では,V曲げ加工金型の耐荷重と疲労特性の向上を目的として,トポロジー最適化を含めた方法による2つ穴ダイと,人間の直感に基づくキーホールダイを提案した結果を示した.トポロジー最適化を用いる方法では,トポロジー最適化によって形状を探査し,形状の近似楕円の適正位置を重合メッシュにより求めた.これらの結果に基づき,パラメトリック適正化により,涙状の2つ穴形状を求めた.キーホールダイは,パラメトリック適正化によって,形状を適正化した.提案のダイの効果を検証するために静的破壊試験と疲労試験を実施し,涙形状の2つ穴を有するダイは従来ダイに対して,強度向上が見られた.一方,キーホールダイでは,強度が低下した.これを改善するため,ピアノ線を巻き付けたキーホールダイを提案し,著しく強度向上を実現する効果があることを示した.本研究では公益財団法人天田財団のご援助により,V溝底のひずみを低減し,疲労寿命を延長し得る金型形状を得ることができ,さらなる研究を進めるための目処を得ることがでました.ここに公益財団法人天田財団に心より感謝の意を表します.本研究の推進に際し,当研究室において研究テーマとして薬野龍之介氏が真摯に取り組まれました.また,神奈川産業技術総合研究所の高橋和仁氏,電気通信大学の遊佐泰紀助教,梶川翔平准教授,ものつくり大学の牧山高大准教授に協力を得ました.薬野氏のほか,研究のテーマとし,当研究室では上田裕典氏と宮川直樹氏が,遊佐研究室においては諏訪浩貴氏が研究に取り組まれました.深く感謝いたします.図18静的破壊試験における破断状況− 65 −
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