天田財団_助成研究成果報告書2024
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形状を最適化するコードを新たに開発した.ここで,Swansea大学にて開発された汎用コードELFENのソルバーを用いた■■.平面ひずみにてトポロジー最適化を実行した簡単な解析例を図2に示す.長方形の2点に荷重を作用させている.長方形の中央上面に発生する水平方向の応力cを最小化するための形状を求めた.上面[A]部は形状最適化の対象外とし,[A]部を除く[B]に対して形状を最適化した.仮想密度とヤング率はほぼ比例関係にあると仮定し,中央上面の応力cが小さくなるように微小長方形(Voxel)の密度を繰り返し調整する.応力cをVoxel密度で偏微分し影響度を求め,影響度に応じて密度を修正した.これは,ニューラルネットワークで用いられている誤差逆伝播法と同様の手法である.1回当たりの最大の密度修正量を10%とした.50回修正後では,中央部下部の三角形部分を空洞化する形状が得られた.図2応力値を最小化するトポロジー最適化トポロジー最適化を含めた形状最適化の流れを図3に示す.トポロジー最適化によりV溝底に生じる応力を最小化するための形状を探査する.トポロジー最適化では人間の直感では得られない形状の取得が期待される.ここで,V溝上面や下部など図中①の赤色の部分は,適正化の対象外とする.ここで図に示す2つ穴形状(右半分では1つ穴)が得られたが,形状はVoxelの集合体であり,滑らかとならない.図3形状最適化の流れトポロジー最適化によって得られた穴形状を滑らかな楕円形状に近似し,重合メッシュ■■を用いて穴の適正位置を求めた.概念図を図4に示す.グローバルメッシュに,穴を有するローカルメッシュを重合して解析を行う.ローカルメッシュの位置を変更しても,不連続な部分が独立しているため,メッシュを再作成する必要がなく,位置をパラメータとするパラメトリック適正化に適している.図4重合メッシュを用いた穴位置適正化トポロジー最適化により穴形状を,重合メッシュを用いて適正な形状を求めた.その結果に基づき,通常の有限要素法解析を用いて,パラメトリック適正化を実行して,最適形状を決定した.■■ 直感に基づき考案したキーホールダイの提案上述のトポロジー最適化では,応力を評価するのはV溝底であり,上面を最適化の対象外としている.この条件に当てはまらない形状を,著者の直感に基づき考案した.V溝中央部にスリットを設け,その下に円形状を設けるキーホール形状である.キーホール形状を,有限要素法を用いたパラメトリック適正化により形状を求めた.概念図を図5に示す.キーホールダイでは,従来ダイで最大応力が生じる部分にスリットを設け,スリットの先に応力集中が生じないように円形の穴を設ける.このような形状は,前述のようにV溝上部を適正範囲から除外している場合には,トポロジー最適化では得られない.円形穴の底に大きな応力が生じるため,この応力が最小となるような穴半径rと穴深さaを求めた.■■■検証実験方法トポロジー最適化によって求めた2つ穴ダイと,直感を基に提案するキーホールダイの効果を検証するために,静的破壊試験と,繰り返し負荷による疲労試験を実施した.実験に用いたパンチを図6に示す.負荷を加える度に新しい板を挿入するのは,非効率であるため,工夫することとした.まず,図6(a)のように曲げた板をパンチ表面に挟持し,ダイに押しつけた.この場合,繰り返し負荷を加え図5キーホールダイ形状とパラメータ− 62 −

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