1.研究の目的と背景キーワード:金型形状,トポロジー最適化,疲労試験産業界にて板曲げ加工に広く適用される図1に示すV曲げ加工において,ダイの溝底で発生する割れが大きな問題となることがある.ダイを継続使用すると,割れが進展して,ある時突然にダイが分裂し,分裂片が飛び出し,作業者に怪我を負わせることがある.塑性変形中に金型に蓄積されるエネルギーは非常に大きく,場合によっては大きな事故につながりかねない.曲げ加工として,エアベンディング,ボトミング,コイニングが行われている.エアベンディング<ボトミング<コイニングの順に,高精度加工が可能であるが,同時に,加工荷重も大きくなる.エアベンディングが実施されることを前提として,ダイ設計される場合が多い.製造現場においては,高精度加工が要求されると,緊急措置として,ボトミングやコイニングが採用されることがあり,通常の繰り返し作業の中で,割れの進展が進んでいると,一時的な荷重が大きくなるボトミングやコイニングの適用によって,金型が破壊することがある.したがって,割れが生じないようなダイを設計・製作することも意義がある.従来は,摩耗対策として,熱処理によってダイ全体の硬さを上昇させていた.ところが,全体が硬いと,ダイ破壊時にダイの破片が飛散しやすくなるため,現在では,表層のみを窒化処理して硬くしている.このような工夫をしてもダイの破壊問題は,現存しており,現状以上に割れにくいダイの開発が望まれている.図1V曲げにおける応力状態そこで,計算力学分野で用いられているトポロジー最適化技術■■などを用いて,ダイ溝底部の割れの原因と考えられる引張応力を最小化するダイの最適形状を設計・製作し,有用性を静的破壊試験,および,疲労試験により検証した.なお,本報告では,損耗に関する成果については省略する.電気通信大学機械知能システム学専攻( ■■■年度重点研究開発助成課題研究■■■ ■■■■■■■■■)教授久保木孝2.研究方法3.解析と実験手順研究の対象とした加工条件を表1に示す.パラメータは図1に対応している.ダイ形状は,株式会社アマダにて用いられている標準的な形状をベースに設計した.ダイ形状の最適化を行うに際し,成形品の曲げ半径は極小にまで低下できることを前提とする.直感的にはV溝斜面を結ぶ大きなRを設けると,応力を抑制できると考えられるが,曲げられた板形状の曲げ半径が必然的に大きくなり,成形形状の自由度が制限される.そのためV溝底には大きなコーナ変形を設けることはしない.ダイ形状の最適化は,①トポロジー最適化に基づく2つ穴ダイと②直感に基づくキーホールダイについて実施し,静的破壊試験と,繰り返し負荷を作用させる疲労試験を実施した.■・■トポロジー最適化による つ穴ダイの提案変位を最小にするためのトポロジー最適化ではこれまで研究され ■,一般に使用されている.ここでは,応力値を最小とするために,汎用コードのソルバーを反復使用し表1実験条件パンチ解析での取り扱いヤング率 ■■■■■先端半径 ■■■■■先端角度 a■■°解析での取り扱いダイ板材ヤング率 ■■■■■ダイ幅 ■■■■■V溝幅 ■■■■溝底半径 ■■■■■V溝角度 a■■°肩半径 ■■■■■■奥行き (mm), 実験のみ材質,実験解析での取り扱い材質長さ ■■■■板厚 ■■■■奥行き (mm), 実験のみ剛体 ■■■■■■■剛体(板曲げ時)弾性体(トポロジー最適化) ■■ ■■■ ■■■■■■■ ■ねずみ鋳鉄, FC250弾塑性体■■■■■■ ■■ ■− 61 −■曲げ加工金型の溝底亀裂および肩部損耗のメカニズム検討と長寿命化に関する研究
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