天田財団_助成研究成果報告書2024
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■ 一方で、ピンオンディスク摩擦試験機を用いて各濃度における摩擦特性を明らかにしました。pH1のHNO3溶液で腐食した粗い表面は、相手側Si3N4ボールを用いた場合に0.083の高い摩擦係数を示し、pH1条件下でのta-Cコーティングの効果が低下することが示されました。(図2) キーワード:炭素硬質薄膜,腐食,摩擦摩耗 ■3.国際会議報告■図1■pH1硝酸溶液におけるta-Cコーティングの小さなピッティング、亀裂の進展、剥離を含む腐食過程 図2■各濃度の硝酸溶液におけるta-Cコーティングの平均摩擦係数 他の研究者のディスカッションを通じて、窒素ドープ技術やその応用分野に関する知見が深まりました。今回の発表内容をもとに、論文としてまとめる作業を進めます。発表後にいただいた質問やコメントを通じて、研究の課題点や改善点を明確にすることができました。具体的に、窒素を含有するta-Cコーティングの導電率や断面構造の観察と評価は追加実験として深掘りの目標を確立できました。これにより、今後の研究の方向性がより具体的になりました。特に、今年度10月までにTribology International 雑誌を目指して、精力的に執筆を行います。 1.開催日時■■ ■ ■年■月■日~ ■ ■年■月■日■ 2.開催場所■■イタリア■サレルノ■80名以上の研究者が参加し、会議では口頭発表やパネルディスカッション、ワークショップが行われ、最新の研究成果や技術革新について活発な議論が交わされました。 私の発表は、「窒素を添加したta-Cコーティングの硝酸溶液中における腐食および摩擦挙動の解明」という題目で行いました。本研究では、窒素を添加したta-C(tetrahedral amorphous carbon)コーティングを作製し、硝酸(HNO3)溶液中での耐食性及び摩擦摩耗特性を明らかにしました。ta-Cコーティングは、高いsp3ハイブリッド構造を特徴としており、その化学的な不活性さからこの会議は、トライボロジー(摩擦学)の最新研究を主要テーマとし、以下のテーマが取り上げられました:摩擦、摩耗、潤滑剤、生体摩擦学、バイオミメティクス、表面工学。また、グリーントライボロジーという新しい分野もカバーされました。グリーントライボロジーは、エコロジカルバランスや環境および生物への影響という観点からのトライボロジーの科学と技術を指します。 酸性環境での軸受鋼腐食防止のための保護膜として期待しています。 本研究では、窒素を添加したta-Cコーティングに取り組むことで破壊靭性が向上し、最終的に硝酸溶液中での耐食性と摩擦特性が向上することが示唆されました。硝酸溶液の濃度がpH1まで上昇すると、ta-Cコーティングの表面には亀裂やピッティングが大幅に増加しました。これにより、硝酸溶液中でのta-Cコーティングの変化プロセスを明らかにしました。具体的に、ラマン分光法により、窒素の取り込みがsp2構造の増加をもたらし、電子伝導性を高め、その結果、酸性溶液中でのta-Cコーティングの耐食性が低下することが明らかになりました。SEM観察により、小さなピッティング、亀裂の進展、剥離を含む腐食過程が明らかになりました。(図1) 名古屋大学大学院工学研究科■マイクロ・ナノ機械理工学専攻■( ■ ■年度■国際会議参加助成■■■■ ■ ■■■■■■ ) 助教■張■鋭璽■■■■■■■− 487 −■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

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