天田財団_助成研究成果報告書2024
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さらに、今回は当初の予測を大きく超えて学生の論文投稿が多く、247名の会議参加登録者のうち88名が学生の皆さんであった。Fig. 3に示すように投稿時に口頭発表を希望した投稿者も多く、口頭発表の採択率は66%であった。学生発表は、口頭発表で49件が採択された。最終日のClosing Sessionでは、合計9名の優秀発表賞を口頭発表とポスター発表からプログラム委員による厳選な評価の元に表彰を行った。 また、Fig.4には講演された論文を会議トピックスで分類した結果をしめす。A~Iの9つの分野でまんべんなく論文発表されたことがわかる。最近のレーザー学会、応用会議は初日午後のOpening Sessionにおける3件の基調講演と3件の招待講演で始まった。この6名の講演者は、実は2019年に決定しており、4年ぶりに実現した講演であった。もちろん、4年間の研究の進捗も期待通りであり、かつ魅力的なもので、十分に当該シンポジウムの学術的プレゼンスを証明していただいた。 基調講演は、最初に、次期韓国光学会会長で次期APLS2025の議長も務めていただく韓国原子力研究所のYoung Uk Jeong教授により、267nmフェムト秒レーザーパルスで駆動されたフォトカソードからの電子をRF電界で加速することで、レーザーパルスとのタイミングジッターを1 fs程度に抑えた電子回折計測が実現され、レーザー励起原子および分子の高速過渡状態を電子回折で計測できることが報告された。East China Normal UniversityのJian Wu教授は、Heガスジェット内の重水素、水素分子と高強度光電場との相互作用において分子の過渡的配列機構が機能し、分子イオンの反応をプローブ計測できることが報告された。3番目の基調講演は阪大の余語覚文教授により、高強度レーザープラズマにおけるGeVにも及ぶ高エネルギー電子はコンパクトな中性子源を実現することが実験データから示され、中性子分光という新たな分野が拓かれるという先駆的講演が行われた。 Opening Sessionは、その後、韓国GISTの現状ではアジアでもっとも高出力な4PWレーザー開発に関するSeong Ku Lee教授のご講演、横浜国大の馬場俊彦教授によるフォトニッククリスタル導波路のスローライト機能を使ったコンパクトな角度走査機能を有する新しいライダー光源デバイスのご講演、北京大学Yun-Feng Xiao教授による高Q値のマイクロ共振器レーザーを用いた共振器内ラマン分光の講演が行われた。生憎、もう1件、ペロブスカイト材料を用いたプラスモニックナノーザーのご講演を台湾のYu-Jung LU Li教授に依頼していたが台風の影響で来日が実現できなかったのは残念であった。 会議は、夕刻のレセプションを賑やかに開催し、2日目、3日目は3つの会場でパラレルセッションで進め、最終日の午前のセッションで終了した。一方、2日目、3日目の夕刻に分けてポスター発表セッションを行った。正直、これほど賑わう活発なポスターセッションは珍しいと思える盛況ぶりで、発表した学生をはじめとした若手研究者には非常に刺激になったよい発表の場であったと思われる。今回、国内で開催する会議では異例と思われるが、海外での国際会議を参考にポスターセッションで無料のアルコールも出した点も賑わう要素の手助けになったかもしれない。いずれにしても夕食までのポスター発表会場での1時間半も貴重な参加者間のネットワーキングに貢献できた。 さて、会議の統計データに触れさせていただくと、Fig.2は参加者の国別統計である。開催国の参加者がどうしても多くなるが、32%が中国、韓国をはじめとした海外からの参加者である点はコロナ禍明けの対面形式の国際会議への参加意義を多くの研究者に認めていただけた結果である。 物理学会等の国内のレーザーに関する講演会においても、レーザー装置、レーザー材料の新規開発の講演は減少しており、方式・材料面での淘汰が進んでいることが伺われるが、今回A: Solid-state, Fiber Lasers, and Advanced Laser Materialsのカテゴリーにおいて28件の講演があり、国内の主要な研究チームに参加いただくとともに、韓国、中国の先端研究が発表されたのは主催側として非常にうれしい限りである。もちろん、その裏にはプログラム委員の方々の勧誘の力が大きく、H: Laser Metrology, Fig. 2: 国別発表数 Fig. 3: 投稿数と発表数種別 − 449 −

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