天田財団_助成研究成果報告書2024
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(1)1.研究の目的と背景キーワード:粗微動機構,冗長システム,軌跡生成近年の製造業の進歩に伴い,レーザ支援製造プロセスは,新たな高速・高精度製造技術として大きな関心を集めている.最新のリソグラフィ装置,パウダーベッドレーザ積層造形,レーザ切断,レーザ穴あけ,レーザアシスト微細加工,表面仕上げ■テクスチャリング,レーザアシストバリ取りプロセス■■は,いずれも高い生産性を実現するために,一般的にガルバノミラーや超高速リニアアクチュエータシステムを利用した精密位置決めシステムで駆動される低■中出力のレーザビームを使用している ■.通常,レーザ加工を広範囲に適用するためには,これらの短いストロークの高速な「微動」アクチュエータを,ボールねじやリニアモータ駆動軸のような長いストロークの「粗動」アクチュエータで駆動し,広い加工領域を実現する必要がある.このようなレーザ加工機の設計では,粗動(低速)軸と微動(高速)軸の両軸が同じ方向に駆動する冗長軸構成になる■■.このようなサーボ機構は「デュアルドライブ」システムとして知られている.本研究では,直交 軸のデュアルドライブによるレーザ加工システムを対象に,新しいリアルタイムでの軌跡生成法を提案する■■.非常に高速で動作する最新のレーザ加工を対象とした場合,こうしたデュアルドライブの 軸システムのリアルタイム軌跡生成は極めて重要な課題となる.一般的に,指令軌跡は各ドライブの動的および運動学的な制限を考慮して生成する必要がある.ここで,粗動アクチュエータは大きなストロークを実現する一方で,加速度や躍度の限界は低く制限される.反対に,微動アクチュエータは狭いストロークしか実現できないが,加速度と躍度の限界は高く,粗動アクチュエータの■~■倍での高速動作が可能である.そのため,一般的な方法としては,低速動作には粗動アクチュエータを使用し,高速動作には微動アクチュエータを使用する.このような問題に対する従来の軌跡生成法は,「相補フィルタリング」アプローチに基づいている.指令位置軌跡ff■■■はローパスフィルタリングされて粗動軸に送られ,同時にハイパスフィルタリングされた目標位置が微動軸に送られる.この実用的な方法は,時系列フィルタリングに基づき,駆動軸のダイナミクスに応じた指令分配が可能になるため,リアルタイムシステムへの導入に適している.しかしながら,この相補フィルタリングによる手法では,駆動部の運動学的限界は考慮されていないため,東京工業大学科学技術創成研究院未来産業技術研究所( ■ ■年度奨励研究助成(若手研究者枠)■■■ ■ ■ ■■■■ )助教田島真吾2.研究方法アクチュエータの駆動限界や意図しない振動を引き起こす可能性がある■■.粗動機構および微動機構それぞれの駆動軸の運動学的限界を考慮して指令軌跡をリアルタイムに生成するために,本研究では移動平均フィルタの特性を有する■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■(■■■)フィルタを用いたリアルタイム軌跡生成法を提案する■■.■■■フィルタを用いる理由として,まず第■に軌跡生成に■■■フィルタを利用することで,リアルタイム性を持つ実機実装が可能となる.次に,低域通過フィルタの特性を持つ■■■フィルタを用いることで,高速での位置決め時に発生する機体振動を抑制することができる.最後に,従来研究■■■■とは異なり,提案法では粗動軸と微動軸の同期動作を別々に制御可能である.粗動軸で生じた「補間」誤差を補正するために微動軸を使用することで,微動軸の駆動指令を生成する際にストロークの制限を考慮することが可能となるとともに,エンドエフェクタの位置決め誤差を最小限に抑えることが可能になる.図1に提案するデュアルドライブシステムの軌跡生成法の概要を示す.図に示すように,粗動軸と微動軸の両方の駆動指令は,速度パルスコマンドを■■■フィルタリングすることにより生成される.使用する■■■フィルタの伝達関数を以下に示す.𝐺𝐺𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹=1𝑇𝑇𝑖𝑖1−𝑒𝑒−𝑠𝑠𝑇𝑇𝑖𝑖𝑠𝑠ここで,■■はフィルタ時定数であり,低域通過フィルタの減衰周波数と周波数応答でのノッチを制御する■■.例えば,式ff■■で表わされる■■■フィルタは,不要な残留振動を抑制するためにω■■ π■■■■■■■■…■で連続するノッチを生成する.また,■■■フィルタへの指令は,工具の直線移動図1■■■フィルタを用いたデュアルドライブシステムの軌跡生成法− 434 −デュアルドライブシステムの軌跡最適化によるレーザ加工の高速高精度化,𝑖𝑖=1⋯4.

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