図4:撮像した静脈像に特異値分解を行った結果16)3.生体イメージング作製したLTPSトランジスタのバックプレーンは、60µsという高速で1セルを読み出すことができる。これは、従来報告されてきた有機トランジスタやIGZO、アモルファスシリコンを用いたトランジスタと比較して、移動度が5~10倍と高いためである13-15)。さらに、移動度が高いためにセルを微細化することもでき、従来のフレキシブルイメージセンサよりも高精細な508 dpiという解像度で設計されている。この高精細、高速動作するLTPSトランジスタと高感度を有する有機フォトダイオードを集積化することで、4.7 µW/cm2という非常に強度の低い光を高速に検出することができた。我々の開発したフレキシブル有機イメージセンサの特徴として、光学系を用いずに、皮膚に直接イメージセンサを接触させるだけで、指紋を撮像することができる点がある。実際に、有機イメージセンサを用いて指紋を撮像した結果を図3に示す。撮像した指紋の画像は、隆線の数、分岐点、端点といった特徴点のみならず、汗腺の位置まで検出できており、生体認証を行ううえで重要な指紋情報が撮像できている。先ほど述べたように、光学系を用いずに、高精細な指紋像を撮像できるため、システム全体を容易に小型化かつフレキシブル化することが可能である。さらに、フレキシブル有機イメージセンサと光学レンズを組みあわせることで、静脈を撮像することもできる。図3にフレキシブル有機イメージセンサを用いて、指の静脈像を撮像した結果を示す。静脈を撮像するために、指の上部から近赤外のLEDを用いて光を照射し、指を透過した光をレンズで集光することで、静脈の撮像を行った。今回撮像した静脈像は、静脈認証を行う上で一般的に用いられる、静脈の分岐点や分岐角度、本数などの特徴的な情報が明確に取得できている。また、有機イメージセンサで撮像した静脈像は、CMOSイメージセンサを用いて撮像した静脈画像と比較したところ、ほぼ同等の像を所得できていた。今回開発したフレキシブル有機イメージセンサは、前述した通り、高速撮像も可能である。そのため、指紋や静脈といった静的な生体情報を撮像できるのみならず、脈拍などの動的な情生体報を計測することができる。従来の脈波計は、固いセンサを用いており、指先や耳たぶなどの特定の位置でしか計測できなかった。一方で、フレキシブルなセンサは、指先のみならず、手首や額等にも貼り付けることでき、脈波の計測が可能である。開発したフレキシブルイメージセンサを用いて測定した結果と市販の脈拍計を用いて測定した結果を比較したところ、どちらのセンサでも、1分間当たり77拍と同じ心拍数を示していた。さらに、脈波のピーク位置の平均時間差を評価したところ、市販の脈拍計と比較して30 msと非常に小さい値を示しており、市販の脈拍計と同等の性能で計測することができることが確認できた。開発したフレキシブルイメージセンサを用いた応用例の1つに血流の可視化があげられる。今回、開発したフレキシブルイメージセンサを用いて撮像した静脈像の時間変化に関する画像に対して特異値分解を用いて解析することで、血流の可視化を行った。特異値分解は、画像解析に古くから用いられている手法で、画像の時間変化などから特徴量を抽出することが可能である。図4に、実際の特− 427 −
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