天田財団_助成研究成果報告書2024
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層1の下にある層2は、層1に比べてSiの強度が低く、第二の表面活性化プロセスによってArの強度が高くなっている。したがって、堆積されたSi中間層は層1と層2で構成されている。層3、層4、層5はガラス表面に対応し、その組成は元のガラス表面とほぼ同じである。層3は図5の元のガラスの層1に対応し、浸出したAlとCaで構成されている。図6bの層4は元のガラスの層2に対応し、AlとCaが欠乏した組成を示している。層5は元のガラス表面の層3に対応し、アルミノシリケートガラスのバルク部分である。ガラス表面のEDXラインプロファイルを示している。図4bは、図4aの矢印に沿った各元素の強度を同じスケールで示している。アルミノシリケートガラスの組成として、O(酸素)、Al(アルミニウム)、Si(シリコン)、Ca(カルシウム)が検出された。EDXプロファイルに示されるように、ガラス表面には3つの層が見られる。層1はガラスの最表面にあり、AlとCaが豊富であることが図5bに示されている。層2は層1の下にあり、AlとCaが欠乏している層である。層3は層2の下にあり、AlとCaが豊富で、これはバルク組成と考えられる。この結果は、Caのようなネットワーク修飾剤やAlのような中間物が浸出し、AlとCaが豊富な最表面層がAlとCaが欠乏している層の上に形成されることを示している。図5aおよびbは、Si中間層を使用したSABプロセス後のガラスの断面接合界面の明視野(BF)およびHAADF STEM画像を示している。STEM画像は、ガラス基板間の接合界面が11 nm厚のアモルファス中間層で構成されており、二つの中程度のコントラスト層が強いコントラスト層を挟んでいることを示している。また、堆積されたSi層の下のガラス表面は、図5に示される元のガラス表面と似た構造を持っていることが観察された。接合界面の組成を分析するために、Si中間層を用いたSABによって接合されたガラス基板の接合界面のEDX解析結果を図5cに示す。接合界面で検出された元素は、ガラスの構成元素であるO(酸素)、Al(アルミニウム)、Si(シリコン)、Ca(カルシウム)と、イオンビームに含まれるAr(アルゴン)およびイオンビーム源の内壁からスパッタリングされたFe(鉄)である。図4a) 表面活性化されていないガラス表面のHAADF-STEM画像b) (a)内の矢印に沿ったEDXラインプロファイル。EDXプロファイルの結果に基づいて、接合界面は図5bおよびcに示すように、対称的な5つの層に分けることができる。層1は他の層に比べてFeの強度が高く、図5aおよびbの接合界面の中心で最も強いコントラストに対応している。Arイオンビーム照射により、イオンビーム源のステンレス内壁のスパッタリングによって活性化された表面にわずかなFeが堆積する。このFe層は、堆積されたSi層との間の接着を強化するナノ接着層として報告されている。EDXラインプロファイルの結果は、以前の報告と一致している。図6a、bは、AlO中間層を用いたSABによって接合されたガラス基板の断面接合界面のBFおよびHAADF STEM画像を示す。ガラス基板はアモルファス状のAlO中間層を介して接合されてる。AlO層のアモルファス構造は、イオンビームスパッタリングによるAlOの堆積によるものである。堆積されたAlO層の厚さは約9nmである。図5に示すSi中間層を用いたSABによる接合界面と比較して、堆積されたAlO層は均一なコントラストを示す。Si中間層を用いた接合界面で見られる界面層の強いコントラストは観察されない。図6cは、AlO中間層を用いたSABによって接合されたガラスウエハの断面接合界面のEDXラインプロファイ− 409 −

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