天田財団_助成研究成果報告書2024
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キーワード:ガラス,接合,光学デバイス 1.研究の目的と背景 生じることがある。そのため、常温でのガラス接合プロセスが望ましい。 アニール温度を低減するため、従来の研究ではプラズマやUVを用いた表面活性化により親水性接合が改良されてきた。O2やN2プラズマを用いた表面活性化は、ガラス表面のOH基を増加させるために広く研究されてきた。UV照射による表面活性化では、UVによって生成されたO3を用いて表面の有機汚染を除去し、同時にガラス表面の親水性を改善する。しかし、親水性接合のメカニズムはOH基の重合であるため、通常200℃以上のアニールが必要である1)。 最近では、無機材料を常温で接合するために表面活性化接合(SAB)が開発された。活性化された接合面を高真空下で加熱せずに接合する方法である。しかし、標準的なSABではガラスを接合できないことがわかっている。この問題を克服するために、SiおよびFe中間層を用いたSABが開発され、ガラス表面間の接合が達成された。このアプローチでは、Arイオンビームで活性化された表面が、Arイオンビームスパッタリングを用いて堆積された薄膜で覆われる。ガラス基板は、10 nm未満のシリコン中間層および1 nm未満のFeナノ接着層を介して常温で接合される。しかし、堆積されたシリコン中間層は接合界面の可視光の透明性を劣化させる。そのため、シリコン中間層を用いたSABは光学デバイスには適していない2)。 これらの金属やシリコン中間層に対して、アルミナ(AlO)は接合の中間材料として注目されている。AlOはその高い機械的強度、高い耐水性、および400–1000 nmの波長に対する低吸収率と屈折率の均一性などの優れた光学特性により、光学デバイスで広く利用されている。接合の中間層として、AlO層は200℃以上の原子層堆積(ALD)プロセスを用いて堆積される。ALD AlO表面は水蒸気や酸素プラズマで処理され、親水性表面が得られた後、200–330℃でアニールすることによりSi、SiO2、およびIII-Vフォト半導体の接合が達成される。ALD AlO中間層を介した親水性接合は透明な接合界面を達成するが、接合後のアニールおよびALDプロセスには加熱が必要である。 薄いAlO層を堆積するためには、AlターゲットとArおよびO2混合ガスのイオンビームを使用したイオンビームスパッタリングも信頼性の高い技術である。この方法では、Al原子がArイオンビームの運動エネルギーによってスパッタリングされる一方で、Oイオンビームが酸化をレーザを用いた切断等の加工において、重要な指標のひとつが加工速度である。加工速度はレーザ光吸収率に依存するが、これはs偏光とp偏光で異なることが知られており、金属加工の場合はs偏光の吸収率がp偏光と比較し非常に大きい。そのためビーム走査方向が加工特性に影響を与えることを避けるため、一般には円偏光を付与したレーザが用いられる。しかし、円偏光はp偏光とs偏光の合成であり、加工効率は高くない。そこで近年では、軸対称偏光ビームを用いたレーザ加工が着目されている。光電場が中心から放射状に形成されるラジアル偏光では、円偏光と比較し2倍の光吸収率を持つため、次世代のレーザ加工技術として期待されている。また加工そのものだけでなく、加工に必要な高精度計測等のアプリケーションにおいても、高出力レーザの偏光をコントロールする必要があり、このために高出力用偏光ビームスプリッタが用いられている。偏光ビームスプリッタは、ガラスプリズムを張り合わせた構造を持っており、界面に誘電体多層膜等の薄膜が介在している。 現状、このSiO2同士の接合は、主に接着剤ないしはオプティカルコンタクトを用いて行われている。しかし、高出力用のデバイスでは、部分反射層での発熱等により、接着剤では信頼性の高い実装を維持できない。一般的な石英同士の直接接合では、一般的に親水化接合が用いられ、400℃程度の加熱により接合を得るが、高温プロセスによる光学特性の低下といった課題が残る。そのため、常温プロセスで、ガラス同士を接合し、その界面で光学特性を損なわない接合技術が望ましい。 このため、エポキシやUV硬化樹脂を含む接着剤を用いた間接接合は適切でない。接着剤層が光学特性を劣化させ、特に水の浸透に対するシール性能が低下するためである。したがって、信頼性の高い応用を実現するためには直接ガラス接合が強く求められる。 ガラスの直接接合は長い間研究されてきた。一般的な方法の一つに親水性接合があり、これはガラス表面をOH基にする処理を行い、その後600℃以上でのアニールを行うことでガラス表面間に共有結合を形成する方法である。この方法では、接合面のOH基と水が分解され、生成されたH2がガラスのアモルファス構造に拡散する。しかし、高温アニールプロセスは、熱膨張係数の不一致による残留応力で接合界面に損傷をもたらす。さらに、分解されたH2OおよびOH基が接合界面に閉じ込められ、界面の空隙を東北大学■大学院工学系研究科■電子工学専攻■( ■ ■年度■奨励研究助成■ff若手研究者枠■■■■■ ■ ■ ■■■■ ) 助教■竹内■魁■− 406 − 高出力用光学素子実装のための常温接合技術の開発

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