天田財団_助成研究成果報告書2024
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(a) ■■■(b)ィスク利得媒質は、励起径を拡大することで数百W級の超短パルスレーザー発振器及び増幅器に用いることが可能であると考えられる。図6CWレーザー発振実験結果(a) 入出力特性,(b) 発振中のディスク表面温度(c) ディスク温度分布■■■■モード同期超短パルスレーザー発振実験CW発振実験にてディスクモジュールの耐力が実証されたため、次にモード同期超短パルス発振実験を行った。共振器のセットアップは図4に示したとおりであり、Z型共振器を基本とし、曲率半径500 mmの凹面鏡二枚(CM1、2)にて集光された点にKerr媒質として厚さ2 mmのYAGを挿入した。ハードアパーチャーとしてアウトプットカプラー(OC)付近にスリットを挿入した。共振器内の群遅延分散(GDD)は高分散鏡(HD)を用いることで調整した。モード同期は凹面鏡CM2を前後に動かすことで開始した。実験ではGDDの量を-4000 fs2/roundtrip(RT)から-1000 fs2/RTまで段階的に調整し、-1400 fs2/RTまででクリーンなシングルパルスモード同期を得ることができた。図7に最も短いパルス幅を得られた条件、OC透過率0.6%、GDD -1400 fs2/RT, 励起強度300 Wでの出力パルスの自己相関波形、発振スペクトル及びRFスペクトルを示す。sech2型を仮定したときのパルス幅は48.9 fsであった。これはこれまでに報告されているYb添加タングステン酸塩系利得媒質を用いた超短パルスレーザーとして最小の幅である。スペクトル幅は32.0 nmで、そこから計算される時間帯域幅積は0.444であった。一般にKerrレンズモード同期の出力パルスはチャープの無いフーリエ限界に近いパルス幅を持つため、時間帯域幅積は0.315となるはずであるが、今回そこから離れた値となったことは、パルス幅が適切に計測できていないことを示唆している。今回計測に用いた自己相関計は結晶厚1mmの比較的長いパルス用の装置であったので、今後より短いパルスを測れる自己相関計を用意し、再度測定を行う予定である。スペクトル幅から計算されるフーリエ限界パルス幅は35 fsである。図7Kerrレンズモード同期超短パルスレーザー出力特性図8は出力光をフォトディテクターにて受光し、それをRFスペクトルアナライザにて測定した結果である。共振器長によって定まる繰り返し周波数は57 MHzであった。狭線幅かつ70dBの高いSNR、等間隔な高次ビートなどよりシングルパルスモード同期が確認された。図8KLM発振器のRFスペクトル測定結果平均出力は425 mWであった。これは低いOCの透過率によって制限されている。OCの透過率を2%に上げると、平均出力3.2 W, パルス幅59.8 fsを得ることが出来た。OCの透過率を上げると共振器内パワーが減少し非線形性の低下を招くため、これ以上の高出力化はOCの透過率上昇だけでなく、共振器内平均出力の増加が必要となる。具体的には励起プロファイルの改善による利得の上昇、スリット幅の最適化による損失の減少が必要である。図9(a)はモード同期発振時のディスク表面の温度分布を示している。このときディスクの最大温度は64℃であった。CW実験の際よりも温度の上昇が抑制されているのは、実効的な吸収パワーの減少が原因と思われる。励起光学系及び励起レーザーの最適化によって、より吸収パワーを増やすことができるが、現状はパワーの損失が大きい。図9(b)はレーザー出力のモードプロファイルである。綺麗な円形のモードが確認された。ビーム品質を示すM2の測定は行っていないが、KLMは原理的にシングルモード発振をす(a) 自己相関波形, (b)光スペクトル(a)基本ビート(b)高次ビート− 404 −

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