天田財団_助成研究成果報告書2024
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3.研究成果■■■■低熱抵抗接合法の確立開発した装置を用いて接合を行い、熱抵抗の測定を行った。これまでにヒートシンクをアルミニウム合金と多結晶ダイヤモンドの二種、接合方法をUV硬化樹脂及びナノダイヤモンド分散ペーストの二種を試し、その熱抵抗を計測した。表2に本研究にて測定したサンプルの条件を示す。模擬利得媒質として厚さ0.3 mmのサファイア基板を用いた。模擬利得媒質の熱抵抗が低いほど接合層の熱抵抗の算出が精度良く行えるため、熱伝導率の高いサファイア基板を選択した。表2接合実験条件図5は熱抵抗測定装置にて測定された各サンプルモジュールの表面最大温度の変化である。全てのサンプルにおいて熱負荷の増加に対して表面温度が線形に上昇していることが分かる。グラフの傾きは熱抵抗となるため、線形な増加は測定が正確に行えていることを示している。グラフの傾きより算出された単位面積当たりの熱抵抗を表3、「全体」列に示した。圧力以外同条件の#2と#4を比較すると、圧力の印可によって熱抵抗が大幅に減っていることが分かる。これは接合層が薄いほど熱抵抗が低下することに起因している。図5熱抵抗測定結果表3に測定結果及び文献値より算出した各部分の熱抵抗を示す。全体の熱抵抗としてはダイヤモンドヒートシンクとダイヤモンドペーストを組み合わせたサンプル#5が最も低い熱抵抗0.163 Kcm2/Wを示した。表3の媒質、ヒートシンクの熱抵抗は物性値より計算された理論値である。また「余分熱抵抗」は接合を行っていないヒートシンクのみの熱抵抗を測定することによって得た実験的補正値であり、インク層の熱抵抗や水冷界面が完全に定温でないことに起因すると考えられる。これらを全体熱抵抗から差し引くことで接合層の熱抵抗を算出した(表3「接合層」列)。その結果ダイヤモンドペーストにて熱抵抗0.01 Kcm2/W以下、UV硬化樹脂にて0.058 Kcm2/Wの結果を得た。熱抵抗から逆算された接着剤層の厚みは1.2 um程度であり、十分な低熱抵抗を実現できている。しかし本研究にて初めて導入されたダイヤモンドペースト接合は従来のUV硬化樹脂と比べて圧倒的な低熱抵抗を実現可能だということが判明した。接合層の熱抵抗を0.01 Kcm2/Wと仮定し、厚さ130 umのYb:Lu2O3、ダイヤモンドヒートシンクを用いたと仮定すると、全体の熱抵抗は0.074 Kcm2/Wと計算される。これは利得媒質の温度が100 ℃に上がるのに21 kW/cm2の励起強度が必要となる極低熱抵抗である。■■ ■■■レーザー発振実験最適化された接合条件を用いて、厚さ130 umのYb:KLuWディスクを用いたモジュールを作製した。それを用いて図3の光学系を構築することでCWレーザー発振実験を行った。図6にCWレーザー発振実験の入出力特性及び温度分布計測の結果を示す。実験の結果、最大出力138 W、光-光変換効率47.3%を得た。上述の通り励起光源の中心波長が強度に依存して変動するため、吸収効率は計算値で57.7%から96.8%の間で変動した。図6(a)の青線はこの吸収率の変動を補正した値であり、補正なしの場合と比べてレーザーの出力がより直線的に増加していることがわかる。このときのスロープ効率は60%であった。ディスク表面の最高到達温度は303 W励起時で79.0 ℃であった(図6(b)、(c) )。このときの励起密度は4.98 kW/cm2であり、そこから計算される実効熱抵抗は0.187 Kcm2/Wであった。このように高い励起密度においてもディスクの破壊や変形は生じず、高い耐力が実証された。以上の結果より、本研究で開発したタングステン酸塩系薄デ表3熱抵抗測定結果ヒートシンク■■■ ■■ ■■■ ■■■■■■ ■■■ダイヤモンド■■接合方法UV硬化接着剤ダイヤモンド■■■■載せただけペーストUV硬化接着剤ダイヤモンド■■■載せただけペースト圧力サンプル■ ■■■■■■■■ヒートシンク■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■全体媒質■■ ■■■■ ■■■■■■■■■■■■■■  ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■余分熱抵抗■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■接合層■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■− 403 −単位面積熱抵抗 (Kcm2/W)

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