■ ■■■レーザー発振実験試料が完成したら、ディスクの波面をマイケルソン干渉計とフーリエ変換法にて評価する。問題がなければ(十分に大きな曲率半径を持ち、非点収差が小さい)、CW(連続波)レーザー発振実験を行う。CWレーザー発振実験では開発済みの24パス多重励起光学系と、980nm帯半導体レーザーを用いて励起し、I字型の単純な共振器にてレーザー発振を行う(図3)。CWレーザー発振実験の評価項目として最大出力、スロープ効率、そして最大励起密度が挙げられる。 ■■■モード同期超短パルスレーザー発振実験モード同期超短パルスレーザーの開発は、シミュレーションと実際の共振器構築の2段階で行う。図4に共振器の概略図を示す。超短パルス発生の手段には短パルス化に最適なKerrレンズモード同期(KLM)を採用し、その実現のために共振器中にKerr媒質とスリットを挿入する。共振器設計のシミュレーションは光線行列を用いた自己無撞着法で行い、光カー効果、熱レンズ効果による屈折率分布の変化も考慮に入れる。また、Split step Fourier法による共振器内のパルスの成長過程の解析も併せて行う。シミュレーションにて設計した共振器を元に超短パルスレーザーの構築を行い、レーザー出力の特性評価(入出力特性、パルス幅、スペクトル等)を行う。必要に応じて分散値や共振器長などの設計を見直し、レーザーの最適な動作点を実験的に探す。このようなピークパワーの高い共振器において短いパルス幅を実現するためには、共振器内の群遅延分散は勿論、カー媒質による自己位相変調、高次分散等の要素を深く吟味する必要がある。図4Kerrレンズモード同期超短パルスレーザ図1薄ディスク利得媒質モジュール接合装置また、これまで銅を用いていたヒートシンクを、CVD合成ダイヤモンド製へと置き換える。ダイヤモンドは銅と比べても3倍以上熱伝導率が高いため、これも温度上昇の抑制に寄与すると考えられる。実際に接合を行い、その品質を評価するためには、熱抵抗を高精度に測定する実験系の開発も重要な要素となる。図2(a)に本研究で開発した薄ディスクモジュールの熱抵抗測定系を示す。測定原理は定常熱流法であり、薄ディスクモジュールの背面を実際のレーザーと同じように水噴流冷却することで一定温度に保ち、媒質表面に半導体レーザーを照射することで熱を加え、表面温度を計測することにより系全体の実効熱抵抗を計測する。レーザー光の吸収は、実際の利得媒質の場合はその吸収、模擬利得媒質の場合は表面に黒インク塗布することで生じさせた。温度計測はサーモカメラ(FLIR社A 320)にて行い、予め励起レーザーのビーム径およびパワーを計測することにより入熱密度を算出した。図2(b)にサーモカメラでの表面温度の測定の例を示す。直径6mmの円形に均一に加熱されていることがわかる。図2(a)熱抵抗測定装置概略図(b) 温度測定例図3CWレーザー発振実験光学系ー発振実験光学系− 402 −
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