天田財団_助成研究成果報告書2024
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℃度温)(003.実験結果■・■造形部温度と溶融池形状始めに,レーザ照射部の温度と溶融池形状の関係を調査した.A部およびB部でのレーザ照射時の温度を測定した結果を図3に示す.始め,Ti64焼結試料は17℃であり,A部にSingle track形成のためのレーザ走査を行う直前まで同一温度を維持していた.次に,B部を一回走査した後,AおよびC部は43℃まで加熱され,二回目では70℃,3回目では80℃まで加熱され,C部におけるSingle track形成のためのレーザ走査前には75℃となった.(a(a-(a-1)図3(a)Single trackレーザ走査時のA部とB部における熱画像と(b)それぞれの代表地点での温度履歴.ここで,17℃の基盤にレーザを照射したA部と75℃の基盤にレーザを照射したB部にて形成された溶融池形状を観察した結果を図4に示す.A部にて確認された溶融池は幅190μm,深さ310 μmとキーホール状であった.一方で,B部にて確認された溶融池は幅250μm,深さ75μmとコンダクティブ状へと変化した.次に,EBSDにより凝固部の結晶組織を解析した.α-Tiの結晶方位解析結果を基に凝固時に形成されるβ-Ti結晶粒を再構築した.これらのβ-Ti結晶粒の成長方向は凝固方向と相関をもっている.A部にて確認されたキーホール状の溶融池では,溶融池界面から垂直方向にβ-Ti結晶粒が成長した結果,キーホール先端と根本部ででは同心円状に凝固しているのに対して,中央部では水平方向に凝固していた.これに対して,B部にて確認されたコンダクティブ状の溶融池においても溶融池界面から垂直方向にβ-Ti結晶粒が成長した結果,mm)を用いて,オートグラフ(AG-X 50kN,(株)島津製作所製)により歪速度5x10-4/sにて引張試験を行い,引張特性を評価した.図4Single trackテストで形成された溶融池の断面組織解析結果.(a)A部,(b) B部.中央部では造形方向に沿って,端部ではやや中央に傾いて凝固していた.積層造形を繰り返すと,上部は再度溶融され,底部の組織のみが残存すると考えられる.そこで,底部について,これらの凝固方向からなる同心円の大きさを算出した結果,A部に形成されたキーホール状の溶融池では半径約40μm,B部に形成されたコンダクティブ状の溶融池では,半径約180μmと4.5倍となった.これは,積層造形材の組織形成において大きな影響を及ぼすものと考えられる.以上より,造形部の温度が室温の時にはキーホール状の溶融池が形成され,75℃以上ではコンダクティブ状の溶融池が形成されると考えられる.これにより,積層造形を繰り返しても残存し,組織形成に関与する溶融池の底部において造形方向が変化し,造形方向を結んだ同心円の半径はキーホール状溶融池では,コンダクティブ状溶融池の1/4.5まで小さくなる.■・ 造形部温度と造形組織の関係前節において,造形部の温度により溶融池形状が大きく変化することを明らかにした.本節では,冷却回路を組み込んだ造形ステージ上にてTi64合金試料を造形することで,キーホール状溶融池により造形を行い,これが組織形成に及ぼす影響を明らかにする.通常の造形ステージおよび冷却ステージにてレーザ走査速度:535,1200 mm/sにて造形を行った際の造形部の温度プロファイルを図5に示す.レーザ照射時に温度が急激に上昇し,その後冷却されていることが分かる.また,特に通常の造形ステージの温度プロファイルにて各レーザ照射の間で急激に温度が増加している箇所があるが,これは,次層の粉末床を敷き詰めた際の表面粗さの変化に伴うものと考えられる.次に,造形前の温度について,レーザ走査速度により異なるが,通常の造形ステージを用いた場合は60~90℃であったのに対して,冷却ステージを用いた場合は,レーザ照射後に急激に冷却され,5℃以下に維持されていた.以上のように,冷却ステージを用いることで,意図していたように室温以下の温度で造形部を保持できることを確認した.(b)2001501005010(a(a-(a-2)AA部A部部A部B部B部部部部BBB部部部部部BCCC部C203040時間(s)(a(a)100 μm100 50(b(b)− 389 −

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