天田財団_助成研究成果報告書2024
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BAC1.研究の目的と背景2.実験方法キーワード:チタン合金,レーザ積層造形,集合組織近年注目されている金属積層造形は,造形方向に対して強い配向を有する組織を形成することが知られている1).これは,溶融池近傍に形成されるプロセス特有の大きな温度勾配と,これに伴う大きな凝固速度に起因すると考えられている.これら固液界面に形成される超温度場に起因して一方向凝固が生じる.このために,強配向を持つ柱状粒からなる組織を形成する.チタン合金においては,β型チタン合金にて,レーザ走査ストラテジーに応じた配向を形成することが報告されている2).しかしながら,一般用途においては等方的な材料の需要も強く,本特性は積層造形の普及において障害の■つとなっているといえる.予備検討を進めた結果,造形部の温度により溶融池形状が大きく変化することが分かった(詳細は■・■にて).本研究では造形部の温度により集合組織の形状と方位の制御を試みた.具体的には,造形ステージに冷却機構を導入し,強い冷却環境にて造形を行い,その影響を明らかにする. ・■造形試料の作製方法レーザ粉末床溶融装置(TruPrint1000,Trumpf(株)製)を用いて本実験を行った.本装置は波長1050nm,ビーム系30 μmのYbレーザを備える.これの造形ステージに図1に示す冷却機構を導入し,積層造形を行った.冷却回路には7℃の冷却水を14 L/minで流した.造形条件は,レーザ強度:160W,レーザ走査速度:1200, 535mm/s,ハッチ幅:110 μm,層厚さ:20 μmを用いた.また,造形パターンとして,チェスボードパターン(3.96×3.96 mm)を図1(a)造形ステージ中の冷却回路と(b)積層造形装置への冷却ステージ一式の組み込み.( ■ ■年度奨励研究助成(若手研究者枠)■■■ ■ ■  ■■■ )大阪大学接合科学研究所講師刈屋翔太採用し,造形中はArガスを流入して雰囲気中の酸素濃度を0.01%以下に維持するよう制御した.原料粉末としてガスアトマイズにより作製したTi64合金粉末(TILOP64-45,大阪チタニウムテクノロジーズ製)を用いた.また,造形部の温度は赤外線サーモグラフィカメラ(Thermo FLEX F50, 日本アビオニクス(株)製)を用いて評価した. ・ 溶融池形状解析のための実験方法造形部の温度が溶融池形状に及ぼす影響を評価するため,Ti64焼結合金に対して,図2に示すレーザ走査パターンにてレーザを走査した.A部にて室温の基盤にレーザを照射した後にB部にレーザを3回繰り返し照射することで基盤を加熱した.その後,C部にて加熱した基盤にレーザを照射した.A部およびC部では1 mm間隔でレーザを走査してSingle trackを作製し,これらの領域にて形成される溶融池形状を観察した. ・■微細組織・力学特性の評価方法微細組織の評価には,走査型電子顕微鏡(SEM, JSM-7100F,日本電子(株)製)とこれに併設する電子線後方散乱回析装置(EBSD,TSL solutions(株)製)を用いた.EBSD観察用試料はTi用電解研磨液(95%酢酸+5%過塩素酸)を用いて電解研磨法により作製した.なお,特に断りのない限り,造形方向における結晶方位をカラーリングする.また,力学特性の評価には,機械加工により採取した板状引張試験片(平行部幅2mm,厚さ1mm,長さ10図2.レーザ照射部の温度と溶融池形状の関係を調査するためのレーザ走査パターン.(a)(b)− 388 −微量元素添加によるチタン積層造形合金における結晶組織の等方化機構と強化機構の解明

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