4.まとめれる。図3、(a)光渦レーザー(1.5 W)を3秒照射したときの析出結晶の偏光顕微鏡画像。(b)結晶析出面積のレーザーパワー依存性。■・■キラル結晶は析出したか?析出した結晶はXRDを測定するには小さかったため、顕微Raman分光法を用いて析出した結晶の同定を行った。図4には、LBGOガラス、レーザー照射によって析出した結晶、固相法で合成したLBGO結晶粉末それぞれのRamanスペクトルを示している。LBGOガラスのスペクトルは、そのランダムさを反映して、300cm-1、530cm-1、800cm-1付近にブロードなバンドが表れている。これらはそれぞれLa-O振動、TO4四面体(T= Ge, B)のT-O-T変角振動、図4、LBGOガラス、析出結晶、LBGO結晶粉末の顕微Ramanスペクトル。TO4四面体の伸縮振動に帰属され、LBGOガラスに特有のものである9,10)。一方LBGO結晶粉末のスペクトルは低波数側から900 cm-1にわたって多数の鋭いピークがみられており、こちらもLBGO結晶の各種振動に帰属することができる11)。レーザー照射によって析出した結晶のRamanスペクトルは、LBGO結晶粉末のそれとほとんど同じ形状をしており、レーザー照射によってLBGOが析出したと結論付けることができる。■・■キラリティ選択的結晶化は起こったか?レーザー照射によって析出した結晶がLBGOであると同定できたので、光渦の影響を受けて片方のキラリティの結晶が優先的に成長しているかどうかを確認しなければならない。そのために、本研究では偏光顕微鏡を用いた旋光度の評価を行った。キラル物質に直線偏光が入射すると、物質のキラリティに対応して偏光面が左右どちらかに回転する。この現象を光学活性といい、このときの偏光面の回転角を旋光度という。偏光顕微鏡には通常試料ステージ直下に偏光子、接眼レンズ直前に検光子という二つの偏光板を備えている。クロスニコル状態で目的の結晶が消光あるいは最も明るく見える位置にステージをセットしたのちに、検光子を左右に回転させることで、目的の結晶の旋光度の正負(右に回すか左に回すか)を判断することができる。図5には、各エネルギーおよび各時間での析出結晶の顕微鏡写真と旋光度の符号を記している。図5から、最もレーザーの影響を受けて大きく成長したと考えられる褐色に着色した結晶は、全ての実験において正の旋光度を示した。これは、光渦レーザーを照射しながら加熱・結晶化させることによって、析出する結晶のキラリティを制御できたことを示唆している。図5、光渦レーザー照射によって析出した結晶の本研究では、キラル結晶相を析出させることが予想され偏光顕微鏡による旋光度評価の結果。− 386 −
元のページ ../index.html#388