2.実験方法 ■ ・■■■■■■ガラスの作成■■本実験で用いるLBGOガラスは、熔融急冷法によって作成した。原料であるLa2O3, H3BO3, GeO2を1:2:2のモル比で秤量・混合したのちに、白金るつぼに充填し1300℃で30分間加熱することによって熔融させた。熔融し均質化した融体をステンレス板上に流し出し、さらにもう一枚 図2、LBGOガラスの(a) XRDパターンと(b) DTAの図1、光渦を照射するための光学系の概要 のステンレス板で上からプレスすることによって、融体を急冷固化させてLBGOガラスを得た。この状態のガラスは、急冷による不均一な熱収縮のために、ガラス内部に大きな歪を抱えている。そこで、700℃で6時間加熱し、その後室温まで5時間かけて徐冷することにより、内部の歪を取り除いた。このガラスの両面は、サンドペーパーおよび酸化セリウム研磨剤を用いて光学レベルまで研磨した。 測定結果。 また、レファレンスとして、LaBGeO5セラミックス粉末を固相法によって合成した。La2O3, H3BO3, GeO2を化学両論比で秤量・混錬した後、1000℃で12時間焼成した。結晶相の同定はX線回折(XRD)を用いて行った。 ■ ・ ■実験装置の概要■■図1に、実験に用いたレーザー照射光学系の概要を示す。本実験では、酸化物ガラスを容易に熔かすことができるよう、CO2レーザー(10.6 μm)を用いている。CO2レーザー光はビームスプリッター(BS)によって二手に分けられる。一方はリアルタイムでレーザーパワーを測定するためにパワーメーターに導入される。もう一方は光渦を生成するためのらせん位相板(SPP)を通過し、対物レンズ(L)によってガラスサンプル表面に集光される。らせん位相板は片側表面に1波長分の段差ができるようにらせん状に研磨した光学素子である。このらせん状の表面形状が通過する光に位相差を与え、光渦を生成する。He-Neレーザーは光路調整およびサンプルへの照射位置確認のために用いた。また、別途カメラでレーザー照射によるガラス表面の変化を観察している。 3.実験結果 ■■・■■■■■■ガラスの基礎物性■■熔融急冷法によって、透明な円盤形状のLBGOガラスを作製した。図2(a)には作成したLBGOガラスの粉末XRDパターンを示している。30°付近と46°付近にブロードなハローが観測された。結晶性物質を示す鋭いピークがみられないことから、結晶性不純物なくLBGOガラスを作製できたと判断した。また、LBGOガラスの熱物性を明らかにするために走査示差熱分析(DTA)を行った。図2(b)のDTA測定結果を見ると、ガラス転移点(Tg)が671℃、結晶化ピーク温度(Tp)が814℃であることがわかった。ガラス転移点は、その温度以上になるとガラス中の原子の運動が活発になり流動性を持ち始める温度であり、ガラスを特徴づけているものである。DTAの結果から、LBGOガラスを結晶化させるためには、800℃程度まで加熱する必要があることがわかった。 ■■・ ■結晶化に必要なレーザーパワー■■ガラスを結晶化させるにあたり、どの程度のレーザーパワーが必要になるのかを明らかにする必要がある。図1の光学系にLBGOガラス基板をセットし、種々のエネルギーおよび照射時間で光渦レーザーを照射し、偏光顕微鏡にて結晶析出の様子を観察した。図3(a)に、光渦レーザー(1.5 W)を3秒照射したときの析出結晶の偏光顕微鏡写真を示している。おおよそ直径300 μmほどの領域に長方形の結晶が多数析出していることがわかる。さらに、中心部の結晶は褐色に着色しており、周囲の結晶よりも大きく成長していることが示唆されている。また、図3(b)には偏光顕微鏡で観察した際の結晶析出領域面積のレーザーパワー依存性を示している。3秒および5秒した場合双方で、1.4 W前後を境に結晶成長が促進されていると考えら− 385 −
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