天田財団_助成研究成果報告書2024
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3.解析結果とした.また本研究では,最大のせん断応力の発生箇所から転位核生成が生じると仮定しているため,これに基づいて転位核生成頻度𝑘𝑘𝑘𝑘(𝑃𝑃𝑃𝑃)を次式のように近似した.𝑘𝑘𝑘𝑘(𝑃𝑃𝑃𝑃)≈𝑁𝑁𝑁𝑁eq𝑘𝑘𝑘𝑘0�𝑹𝑹𝑹𝑹MRSS(𝑃𝑃𝑃𝑃)�exp�−𝐺𝐺𝐺𝐺�𝑃𝑃𝑃𝑃,𝑹𝑹𝑹𝑹MRSS(𝑃𝑃𝑃𝑃)�(7)𝑘𝑘𝑘𝑘B𝑇𝑇𝑇𝑇𝑁𝑁𝑁𝑁eqはナノインデンテーション解析におけるモデルと圧子の配置における等価なすべり系の数(本解析では𝑁𝑁𝑁𝑁eq=3),𝑹𝑹𝑹𝑹MRSS(𝑃𝑃𝑃𝑃)は荷重𝑃𝑃𝑃𝑃において最大のせん断応力が生じる位度𝑃𝑃𝑃𝑃𝑃𝑃,温度𝑇𝑇𝑇𝑇でのpop-in荷重の確率分布を求めることで,置を示す.以上の式(3)~(7)を用いて,異なる押し込み速pop-in発生荷重の温度・押し込み速度依存性の予測を実施した.前節に記載した各解析項目の結果を以下に記す.3.1 ナノインデンテーションMD解析(Step 1結果) 横軸を圧子の押し込み変位,縦軸を押し込み荷重としてプロットした荷重-変位線図を図3に示す.なお,本解析は荷重制御ではなく変位制御であるため,pop-in現象は線図上では変位バーストの代わりに,急激な荷重低下として観測される.図3(a)の底面押し込み,(b)の柱面押し込みにおいてそれぞれ圧子を1.23nm, 0.38 nm 押し込んだ段階で荷重低下が見られ,pop-inの発生が確認された.底面押し込みに比べ,柱面押し込みの方がpop-in発生荷図3押し込み荷重-変位線図(a)底面押し込み(b) 柱面押し込み重が低く,また発生規模(荷重低下量)も小さくなっている.底面押し込み,柱面押し込みそれぞれのpop-in 発生前後の圧子直下の描像を図4に示す.この図は原子を配位数によって色分けし,その結果に基づいて表面と欠陥部分のみを表示したものである.底面押し込み,柱面押し込みそれぞれ1.23 nm,0.40 nmの時点で転位ループの生成が見られ,図3の荷重-変位線図と対応していることを確認した.また両押し込み条件ともに転位ループは底面上に生成されていることが確認でき,したがってこれらの転位は底面すべりによるものであると考えられる.このpop-inの発生時点より前の数段階において,圧子直下の原子の中ですべり系に対する最大の分解せん断応力成分を有する原子応力テンソルを記録した.(a)底面押し込み(b) 柱面押し込み3.2転位核生成の活性化エネルギー(Step 2結果)Step 1のナノインデンテーションMD解析より得られた原子応力テンソルを基に,NEB法に基づくナノインデンテーション中の転位核生成の最小エネルギー経路解析を実施した.横軸を押し込み荷重𝑃𝑃𝑃𝑃,縦軸を𝐸𝐸𝐸𝐸として,転位核生み条件でも,荷重𝑃𝑃𝑃𝑃が高くなるにつれ,活性化エネルギー𝐸𝐸𝐸𝐸が減少する傾向を確認した.柱面押し込みにおけるナノインデンテーション解析におけるpop-in荷重𝑃𝑃𝑃𝑃cの値は底成の活性化エネルギーの荷重依存性を底面押し込み,柱面押し込みともにプロットしたものを図5に示す.曲線は式(2)によるフィッティングカーブである.いずれの押し込図4Pop-in発生前後の圧子直下の描像(表面および欠陥部分のみ表示)図5転位核生成の活性化エネルギー− 381 −�

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