天田財団_助成研究成果報告書2024
377/508

は2.3.2で説明する. 「𝜀𝜀̇=1×10−2 /s」と「𝜀𝜀̇=1×10−6 /s」で示されたのはよって得られた流動応力曲線である.また,「𝜀𝜀̇=1×10−4 /s」で示されたのは応力緩和試験に関する流動応力曲線である.Fig. 1内の右図は,𝜀𝜀=1.5%での応力緩和挙𝜀𝜀=1.5%での𝜎𝜎i(Fig. 1左図の「𝜎𝜎i at 𝜀𝜀=1.5%」)及び応力残留率を得た.その後,𝜀𝜀̇=1×10−4 /sの流動応力にその応力残留率を乗ずることで𝜎𝜎iの流動応力曲線を求めた(Fig. 1左図の「Flow stress of 𝜎𝜎i」). 速度依存性の影響によって 𝜀𝜀̇=1×10−2 /sと𝜀𝜀̇=1×10−6 /sの𝜎𝜎に差異が生じる.緩和試験結果の応力残留率𝑅𝑅2は0.9以上を示す(Table 1).また,𝜀𝜀̇=1×10−4 /sと𝜀𝜀̇=1×10−6 /sの𝜎𝜎が概ね一致していることから,𝜀𝜀̇=1×10−4 /s以下のひずみ速度であれば𝜎𝜎≈𝜎𝜎iと見做しても問題ないように見える.しかしながら,𝜎𝜎iは𝜀𝜀̇=1×10−6 /sの𝜎𝜎よりも有意に低下する. DD(Fig. 1(b))でも,𝜀𝜀̇=1×10−2 /sと𝜀𝜀̇=1×10−6 /sの𝜎𝜎に差異が生じ,ひずみ速度依存性の影響が確認される(𝑅𝑅2=0.44,Table 1),応力残留率の下限値と緩和試験24時間時点での応力残留率から判断して,得られた𝜎𝜎iに大きな問題は無いと考える.また,𝜀𝜀̇=1×10−6 /sの𝜎𝜎が𝜎𝜎iと概ね一致している.低ひずみ速度の単軸引張試験のみでも𝜎𝜎iを定量的に評価できる場合があると言えるが,■■ 非熱的応力成分𝜎𝜎iと熱的応力成分𝜎𝜎∗の分離評価■単軸引張試験結果の𝜎𝜎0.2について,式(1)を用いて𝜎𝜎iと𝜎𝜎∗に分離した結果をFig. 2に示す.𝜀𝜀̇=1×10−2 /sでの𝜎𝜎0.2を100%とした場合に含まれる𝜎𝜎iはRD = 87.3%,DD = 88%,DDでは約92%と非常に高い割合の𝜎𝜎iが存在するため,従来の準静的な単軸引張試験結果の𝜎𝜎0.2には,RDとTDで約12%,DDで約8%の𝜎𝜎∗が含まれていたことになる.本供試材では,𝜎𝜎≈𝜎𝜎iの仮定が概ね成立して は24時間(86400秒)で下限近傍になるが,その後も僅かに応力が減少していく.この応力緩和挙動をカーブフの24時間の真応力-緩和時間関係に対して,式(2)によるカーブフィッティング2)を行い,無限時間後の残留応  ■ 供試材および力学試験片■供試材は板厚1.0 mmの冷間圧延が施されたばね用りん青銅板(JIS-C5210-H,市販材)を用いた.単軸引張試験片および応力緩和試験片の形状はJIS13号B試験片(平行部長さ60 mm,平行部幅12.5 mm)とした.面内異方性の影響を調査するため,試験片の切り出し方向を圧延方向から0° (RD),45° (DD),90° (TD)に設定した.圧延方向1200 mm,圧延直角方向180 mmの板面内から,ワイヤカット放電加工により試験片を作製した.ひずみ測定は,引張試験片面内の中心部にひずみゲージ(TML FLAB-2-17-3LJCT-F)を1枚貼付し,3線式1アクティブゲージ法により実施した.  ■■力学試験条件■ ■■■■単軸引張試験■単軸引張試験は,一般的な準静的ひずみ速度(𝜀𝜀̇=1×10−2 /s)と低ひずみ速度(𝜀𝜀̇=1×10−6 /s)の2条件をひずみ𝜀𝜀=0.5%と1.5%で各24時間実施した.引張負荷中のひずみ速度は𝜀𝜀̇=1×10−4 /s,緩和試験中はひずみッドを微動させた.その後,実験結果における𝜀𝜀=1.5%で力𝜎𝜎を𝜎𝜎iとして評価した. ここに,𝜎𝜎iは非熱的応力成分,𝑡𝑡は緩和試験中の経過時間,𝐴𝐴𝑛𝑛と𝑥𝑥𝑛𝑛はフィッティングパラメータである.本研究では,𝜀𝜀=1.5%での𝜎𝜎iのみを評価していることから,𝜎𝜎iの流動応耐力以降の対数ひずみでは,緩和試験開始時の応力𝜎𝜎0に対する𝜎𝜎iの応力残留率(1−(𝜎𝜎0−𝜎𝜎i)/𝜎𝜎0)に大きな差異は無いと仮定し,負荷中に得られた𝜎𝜎の流動応力曲線に対して,𝜀𝜀=1.5%における𝜎𝜎iの応力残留率を乗ずることで𝜎𝜎iの設定し,万能試験機(Shimadzu Autograph AG-X 100 kN)を用いて室温で実施した.  ■■■ 応力緩和試験■応力緩和試験は万能試験機を用いて室温で行い,対数が一定になるようフィードバック制御を行い,クロスヘ力曲線を直接的に得ることができない.ここでは,0.2%流動応力曲線を得た. 3■■実験結果及び考察■■■■真応力-対数ひずみ関係及び応力残留率-緩和時関係■単軸引張試験及び応力緩和試験結果における真応力-対数ひずみ関係,𝜀𝜀=1.5%での応力緩和試験結果における応力残留率-緩和時間関係をFig. 1に示す.また,カ ーブフィッティングによって決定された式(2)に関するパラメータをTable 1に示す.Fig. 1内の左図において,一般的な準静的ひずみ速度と低ひずみ速度の引張試験に動を示している.2.3.2節で示した通り,この実験結果に対して式(2)によるカーブフィッティングを行うことで,ィッティングによって良好に再現できており,決定係数一方,緩和試験結果の応力残留率は約7時間(25200秒)で下限値をとる.以降は,僅かに応力が増加するものの,応力緩和挙動は停滞していると考えられる.この影響によってカーブフィッティングの精度は低下するがRDとTD(Fig. 1(a),(c))では,供試材が有するひずみ(2) RDとTDの結果が示す通り,すべての試験条件で成立するわけではないことから,注意が必要である. 91.6%,TD = 88.3%である.比較的近い値が得られていることから,その面内異方性は小さい.RDとTDでは約− 375 −𝜎𝜎=𝜎𝜎i−𝐴𝐴1𝑒𝑒−𝑡𝑡𝑥𝑥1−𝐴𝐴2𝑒𝑒−𝑡𝑡𝑥𝑥2−𝐴𝐴3𝑒𝑒−𝑡𝑡𝑥𝑥3

元のページ  ../index.html#377

このブックを見る