天田財団_助成研究成果報告書2024
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0451 ・ ■試験結果 ■引張圧縮試験によって得られた公称応力-公称ひずみ線図を図6に示す。試験速度が速いほど、変形抵抗が増加していることがわかる。反転負荷時の変形抵抗についても、試験速度が速いほど増加している。したがって、ひずみ速度が反転負荷時の降伏応力にも影響を及ぼすことがわかった。 引張圧縮試験では、試験中に試験速度は一定で制御されているが、実際に試験片に生じるひずみの割合は試験中に変化するため、ひずみ速度も試験中に変化する。そこで、取得した応力-ひずみ関係について、代表的なひずみ速度を求めるために、本研究では、次の通りひずみ速度を算出した。まず、引張圧縮試験により得られた公称ひずみ-試験時間の測定データから、相当塑性ひずみ-試験時間の関係を求めた。次に試験開始から引張変形によりひずみ1%まで変形した際の相当塑性ひずみ-試験時間の関係の傾きから相当塑性ひずみ速度を算出した。試験速度と対応する算出した相当塑性ひずみ速度を表2に示す。最速で0.016 s-1の準静的なひずみ速度を有する応力-ひずみ関係を得ることができた。しかしながら、0.1 s-1程度までのひずみ速度の取得は困難であった。本研究では、試験結果に影響を及ぼさないようにレーザー変形計による非接触にてひずベースみの取得を行ったが、試験速度が速い場合、レーザー変位計と試験機の制御が対応できなくなるため、試験が困難であった。 各応力-ひずみ関係を用いて、0.2%耐力から図1に記載した初期の降伏応力sY1および反転時の降伏応力sY2を求めた。図7に各相当塑性ひずみ速度における降伏応力の関係性を示す。バウシンガ効果により反転時の降伏応力の絶対値|sY2|はいずれも初期の降伏応力の絶対値|sY1|より低い。また、ひずみ速度の増加にともない、反転時の降伏応力の絶対値|sY2|は増加する。 図5■試験機外観 材料製造工程板厚tt0/ mm試験装置標点間距離l0/ mm試験速度vt/ mms-1(公称ひずみ速度/ s-1)目標ひずみ/ %荷重測定ひずみ想定座屈防止方法隙間G/mm厚さt2 レーザー変位計隙間法0.02単位[mm]試験片座屈防止治具レーザー変位計ひずみ測定用窓座屈防止治具具を用いた。試験片をはさみこむように治具を配置し、治具間にワッシャーを入れることにより、隙間を固定した。ワッシャーは1.9 mmの厚さを用意し、実板厚から0.02mmの治具と隙間が存在する状態とした。試験中のクロスヘッドの移動のために、治具により試験片が拘束されていない箇所が存在するが、非拘束箇所では試験片の幅を大きくすることにより、座屈を抑制した。治具には、レーザー変位計にてひずみ測定ができるように測定用の窓を設けた。 表1■試験条件 SUS304 (JIS) 冷間圧延→ 焼鈍→ 酸洗→ 調質圧延2 (実厚さ1.88)AllroundLineZ100 THW100.0015, 0.015, 0.15, 0.5(0.00015, 0.0015, 0.015, 0.05)1ロードセル図3■試験片形状 ひずみ測定用窓図4■座屈抑制治具 6570 mmR12.510(165)6540mm− 370 −

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