天田財団_助成研究成果報告書2024
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1.93mmとなった.lbは同じような長さとなったが,テクスチャを施し真実接触面積を減少させることで摩擦が低減し,材料流動が適正になることでlbが増加したことが考えられる.テクスチャ深さを小さくすることによってパンチのAl凝着を分断し摩擦の低減が起こる.それにより塑性流動がより円滑になり後方押出し長さが長くなると考えらFig. 4 Extrusion force-Ram stroke curve in each punchFig. 5 Cross-sectional images of the extrusionFig. 6にマイクロ後方押出しした後の製品硬度分布を示す.鏡面パンチでは,先端部が48-54HV,中間部から後端部が42-48HVとなり,ビレット時の39.2HVより製品硬さが増加した.マイクロテクスチャパンチでは,先端部が42-51HV,中間部が42-48HV,後端部42-48HVとなり,加工硬化度合い鏡面パンチと比べて小さくなった.ナノテクれる.このようなことからマイクロスケールでの塑性加工ではテクスチャ深さを小さくすることによって摩擦低減効果が得られると考えられる.スチャパンチでは,一部硬度が高い箇所が観察されたが先端部が42-45HV,中間部および後端部42-45HVとなり,加工硬化度合いが鏡面パンチ,マイクロテクスチャパンチと比べて小さくなった.■■ パンチ表面への凝着評価Fig. 7に鏡面パンチ,マイクロテクスチャパンチ,ナノテクスチャパンチの表面性状を変えたパンチを用いて加工した後のパンチ表面状態の凝着量を示す.パンチ表面の分析はEPMAを使用した.実験結果からテクスチャを付与することで円周上の溝にMgが入り込み凝着が分断される形になった.また,工具表面のテクスチャサイズが異なる2つのパンチで凝着を比較した場合,マイクロテクスチャパンチよりナノテクスチャパンチの方で凝着量が少なくなった.これは溝サイズを小さくすることによって材料が流入するポケットが小さくなり,凝着を細かく分断できるからと考えられる.また,凝着を分断することで摩擦力も小さくなり荷重が低減したと考えられる.特に,ナノテクスチャパンチの場合に最も凝着が少なく,ナノスケールでの凝着の細かな分断が発生したと考えられる.■■■押出し製品の結晶組織観察Fig. 8に鏡面パンチ,ナノテクスチャパンチを用いた時のInverse Pole Figure(IPF Map)の結果を示す.IPF Mapは結晶面で定義されたもので色によって結晶方位を判別する測定方法である.押出材先端の結晶粒はせん断されずにそのまま流れ出る.材料の後端になる程,材料が縦方向にせん断され結晶粒径が伸びていることが分かっている13).測定位置は押出し初期の非定常状態を除くため,先端から300µm~600µmの範囲を拡大したものである.鏡面パンチに比べテクスチャパンチはせん断され結晶粒が縦にFig.6 Vickers hardness distribution of the extrusion (Measurement condition: 10gf, 5s, Indentation distance: 0.2mm)Fig. 7Evaluation of adhesion to punch by EPMA− 357 −

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