キーワード:マイクロ押出し,純■■,表面テクスチャリング■ 加工技術を用いたマイクロスケール部品の生産性の向上が注目を浴びている1).その中でもマイクロ押出し加工は微細部品成形加工技術の一つとして,産業界からも多くの注目を集めている.押出し加工などの従来のマクロスケールの加工技術をマイクロスケールに適用すると,再現性や精度に問題が生じる.これはいずれも被加工材の結晶粒径や摩擦のばらつきによるサイズ効果が原因と考えられる.Engelらは,マイクロスケールでのダブルカップ押出し試験によって,製品寸法の微小化がトライボロジーに与える影響を明らかにし,製品寸法の減少に伴い,工具-ビレットの接触面積で潤滑油を保持するポケットが減少し,直接接触する面積が増加することで,摩擦が高くなることを報告した2). 面の状態の加工への影響を検討した.さらに,加工中の摩擦の安定化を図るために,硬質被膜の有効性について検討した.ダイス表面への高強度,低摩擦の硬質被膜の適用が有効であり,特にDeposit silicon containing diamond like carbon (DLC-Si)コーティングが最も効果的であると報告した6).Ngailら7)は,超音波マイクロ押出し成形用工具を設計し,成形荷重や表面仕上げへの影響を観察した.超音波の影響によって,成形荷重は減少し,成形部品の表面に有意な改善がみられた. マグネシウム(Mg)は実用金属中で最も軽い構造金属で,生体材料としても今後の更なる応用が期待されている.一方で,稠密六法構造を持ち,室温での塑性加工性が悪く,耐食性などの問題もあることから,Equal Channel Angular Pressing(ECAP)などの結晶微細化処理などの研究が行われている8).超音波マイクロ押出し成形用工具を適用し,加工技術で室温でのマイクロ押出し成形性を向上したと報告された9).これらの研究のようにMgのマイクロ押出し加工の実現は期待されているものの,実現可能性についてはまだ確立していない. マイクロ塑性加工では,マイクロサイズに適した表面性状を整えることが困難とされ,摩擦の低減や成形性の向上を図るためには,最適な工具表面状態を見極めることが不可欠となる.マイクロスケールの成形では,相対的に加工1.研究目的と背景 ■近年,医療,電子機器,化学といった様々な分野で塑性Caoらは,マイクロ押出しの一連の研究3~5)として,ビレットの結晶粒径,形状やその向きなどの微細構造や界富山大学■学術研究部工学系■( ■ ■年度■奨励研究助成(若手研究者枠)■■■■ ■ ■■■ ■■ ) 助教■船塚■達也■スケールに対して表面が粗くなる.この表面の粗さが摩擦や塑性挙動に大きなばらつきを及ぼすことが明らかになっている10).マイクロ機械加工分野では,工具表面での摩擦の低減や潤滑ポケット領域の拡大を図るためにマイクロテクスチャが適用され,十分な効果が得られている11).マイクロ塑性加工でも,工具接触面積の低減,潤滑剤の保持による成形性の安定化をもたらすことが予想される. これらの報告により,マイクロ押出し加工では,結晶粒径の制御や工具-材料界面でのトライボロジーが,成形荷重や材料流れなどの成形性に大きな影響を与えることがわかる. これらの報告により,マイクロ押出し加工では,結晶粒径の制御や工具-材料界面でのトライボロジーが,成形荷重や材料流れなどの成形性に大きな影響を与えることがわかる. 本研究では,マイクロ塑性加工技術の実現を目的として,A6063合金の微細部品の後方押出し加工の研究を行った12,13).過去の研究報告として,パンチ表面にナノテクスチャを適用することで,成形性の向上が実現した.本報では,材料を純マグネシウム(Mg)に変更した.Mgのマイクロ後方押出しにマイクロからナノスケールのテクスチャ工具を用いて,工具接触面積の低減,潤滑剤の保持による成形性の安定化を図る.パンチ表面にマイクロスケールの溝を付与し,パンチ表面の性状の影響を調査した.パンチ表面の溝がマイクロ押出し成形性に及ぼす影響を,押出し荷重,成形後のビレット形状,パンチへの凝着量,製品のミクロ組織分析から観察した. 2.実験方法 ■Fig. 1にマイクロ押出し装置と装置の概略を示す.マイクロ押出し装置は,サーボモーター駆動のスクリュープレスである.スクリュー軸とロードセルを介して連結したパンチの成形速度,位置制御を行う.装置の最大出力は30 kN,最大ストローク11.0 mmである.押出し荷重及びパンチのストローク量は,ロードセルと変位計から制御装置にフィードバックされ,それぞれのデータを得ることができる. Fig. 2に,ダイスとパンチの概略を示す.ダイスは,押出し後のビレットを取り出すために,中央部で分割されている.ダイスはコンテナ内径がφ1.71 mmである.コンテ− 355 − ナノテクスチャ工具を利用したマグネシウム合金の マイクロ微細管成形技術の実現
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