天田財団_助成研究成果報告書2024
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図7ナノインデンテーション試験によるひずみ速度依存性の評価(Al濃度で分けた場合)8)図6から,ひずみ速度依存性を表す指数m値は,Ti-6242S合金においては硬い結晶粒と柔らかい結晶粒で違いがみられたのに対し,IMI 834合金ではm値に違いがほとんど見られなかった.同じdwell fatigue強度の低下を表す合金であっても,ひずみ速度依存性は異なる傾向を示した.そこで,単一結晶粒の硬さに影響を及ぼす要因として考えられる固溶元素に着目して評価を行った.図7は,エネルギー分散型X線分光(EDS) 分析によって得られる元素マッピングを基に,結晶粒をAl濃度の高い結晶粒と低い結晶粒に分けて評価した場合のひずみ速度依存性を示している.Ti-6242Sにおいては,Al-rich領域とAl-poor領域の間で硬さ値はほとんど変わらなかったのに対し,IMI 834においては,Al-rich領域とAl-poor領域で硬さ値に明確な違いが見られた.したがって,Al濃度の違いによる硬さ値の違いが,図6で示したひずみ速度依存性の違いにも影響すると考えられる.Dwell fatigue強度低下の要因となる各結晶粒のひずみ速度依存性の違いについて考慮するとき,単に結晶方位による違いだけではなく,固溶元素図8荷重保持を伴う微小引張試験結果6)濃度の分布による違いについても影響する可能性が考えられる.また,実際にTi-6242SおよびIMI 834において,荷重保持によって引き起こされる実際の変形を評価するために,荷重保持を伴う微小引張試験を行った.変形過程を調査するため,120秒間の荷重保持(試験機の都合上,実際には変位保持)を伴う引張試験を2回行った.図8に荷重保持を伴う微小引張試験の応力ひずみ線図およびSEM像を示す.Ti-6242SおよびIMI 834ともに1回目よりも2回目の方が降伏する応力が低くなっていることが分かる.また,結晶方位を表すIPFYマップおよびSEM像を比較すると,引張試験2回目後では,柔らかい結晶粒(IPF図では緑や紫で示されている)から硬い結晶粒(IPF図では赤で示されている)にかけて大きく亀裂が生じているように確認される.柔らかい結晶粒で発生した変形により硬い結晶粒での変形が誘導されたように確認され,今までシミュレーションで考えられてきた理論と同様の変形挙動が実験的にも生じることが示唆された.− 353 −

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