3.実験結果および考察あり,試験片位置を制御するxyzステージ,荷重を測定するロードセル,変位制御が可能なピエゾアクチュエータおよび試験片をグリップするグリッパー部から構成されている.引張試験においては,試験装置のグリッパー部に微小引張試験片をはめ込み,試験を実行した.2・3ナノインデンテーション試験各結晶粒の弾性率および硬さ値を検証するために,ナノインデンテーション試験を行った.温度変化による結晶粒の機械特性を評価する際には,大阪産業技術研究所で借用したナノインデンテーション装置(Bruker, TI950 Triboindenter) を用いて測定を行った.また,各結晶粒の機械特性のひずみ速度依存性を評価する際には,ひずみ速度を変更できるナノインデンテーション装置(Nano-mechanics, iMicro) を用いて測定を行った.3・1高温下でのチタン合金の変形機構6,7)耐熱チタン合金であるTi-6242SおよびIMI 834,および比較として一般的なチタン合金であるTi-6Al-4Vに対して,室温下および高温下において微小材料試験を行い,温度による塑性変形挙動の違いについて検討した.まず,結晶粒の機械特性の温度依存性を評価するため,25 ℃および350 ℃においてナノインデンテーション試験を行った7).図2にナノインデンテーション試験によって得られた荷重変位曲線を示す.なお,温度依存性のみに着目するため,C軸が70°以上であるα結晶粒のみのデータを示している.全てのチタン合金において,25 ℃よりも350 ℃の方が,最大押込み深さが大きくなっているが,Ti-6Al-4Vが一番大きい差を示した.また,図3に,測定された硬さ値の平均を示す.こちらも,温度依存性のみに着目するため,C軸が70°以上であるα結晶粒に限定した場合の平均値を示している.硬さ値は,すべての合金において350 ℃の方が低い値を示していたが,その差は,Ti-6Al-4Vが一番大きく,その後Ti-6242S,IMI 834と差が小さくなった.次に,結晶粒のすべり挙動や粒界の影響に関する温度依存性を考慮するため,結晶粒を複数個含む試験片による曲図2ナノインデンテーション試験によるチタン合金の荷重変位曲線7)げ試験を行った7).図4に各チタン合金で生じたすべりを示す電子顕微鏡(SEM) 画像および電子線後方散乱回折法(EBSD) により解析した結晶方位を示す逆極点図方位(IPF) マップを示す.α結晶粒のすべりと温度の関係を検証するために,各合金において25 ℃と350 ℃でそれぞれ実験した試験片を比較して,同様のC軸傾斜角を持つ結晶粒を例として示した.すべての合金において,25 ℃および350 ℃で生じたすべりは同様であり,活性化されたすべり面が室温と高温の間で変わらなかった.また,図5に曲げ試験から得られた応力ひずみ線図から得た0.2 %耐力の結果を示す.すべての合金において,0.2 %耐力は350 ℃での値が25 ℃よりも低い値を示していた.25 ℃での0.2 %耐力は3つの合金全てを比較して大きな違いがなかったのに対し,350 ℃ではTi-6Al-4Vの0.2 %耐力がTi-6242SやIMI 834よりも明らかに低かった.単一の結晶粒に対する評価が可能であるナノインデンテーション試験および結晶粒界を含んだ評価が可能である微小曲げ試験において,どちらも高温での塑性変形に対する耐性がIMI 834,Ti-6242S,Ti-6Al-4Vの順で大きいという傾向を得た.したがって,高温環境下において,IMI 834およびTi-6242S合金では,チタン合金の複雑な微細構造に関係なく,各結晶粒が強化されていることが示唆された.Ti-6242SやIMI 834では,固溶強化により高温環境下におけるα結晶粒内のすべりの活動が抑制されたと考えられる.図3硬さ値の温度依存性7)− 351 −
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