1.研究の目的と背景キーワード:衝撃圧力波,可視化,高速変形近年,衝撃力を応用した衝撃塑性加工(高エネルギー速度加工)技術が多数見られるようになってきた1,2).その代表的な加工法として,火薬類の爆発エネルギーを利用する爆発成形や衝撃磁場のエネルギーを利用する電磁成形等が挙げられる2).しかし,これらの加工技術はエネルギーを生み出すための装置や設備に安全面での制約が多く,専用の設備を保有する必要がある1,2).一方で,本研究で着目した衝撃塑性加工技術の衝撃水圧成形法は圧縮空気をエネルギー源としているため,大型の専用設備等を設ける必要もなく,比較的安全かつ安価な衝撃塑性加工技術として応用することができる1).衝撃水圧成形法は,高速度ハンマの衝撃により水圧を瞬間的に発生し成形を行う加工法である1).この加工法を用いた衝撃水圧成形装置は,圧縮空気により加速されたハンマ(以下,衝撃弾と呼ぶ)で密閉器(以下,水圧室と呼ぶ)内の水を打撃し,水を瞬間的に圧縮することで発生した高圧の衝撃圧力波が水を伝播していき,各種の成形加工を行う1~3).ここで,圧力波とは弾性媒質中を伝播する圧力変動の波動の総称である4).圧力波には,圧力変動が十分小さい微小振幅波の音波や圧力変動が大きい有限振幅の非線形波である圧縮波や衝撃波などがある3).本研究では,衝撃弾が水を打撃した際の衝撃によって圧力波が発生するため,衝撃圧力波と呼称する.■・■衝撃圧力波の可視化衝撃水圧成形装置において現状の加工パラメータは圧縮空気の圧力のみであり,これは衝撃弾を発射させる際の打ち出し圧力に相当する.しかし,金属材料の加工に直接的に影響を与えるパラメータには,プレス加工におけるパンチの役割をする衝撃圧力波の速度(以下,伝播速度と呼ぶ)が重要であり,打ち出し圧力のみを直接的な加工パラメータとするのは加工条件として不十分である.さらに,密閉空間となる水圧室内の現象や衝撃圧力波を実測することは非常に困難なため,伝播速度は加工パラメータとして確立していない.衝撃水圧成形法における塑性加工性を検討した例は既に多く存在するが,そのほとんどが打ち出し圧力を加工パラメータとしたものである1,5).また,胡は衝撃水圧成形法を応用し衝撃弾の弾丸速度や水圧室内の衝撃水圧の測定について報告しているが,水圧室内の鹿児島工業高等専門学校機械工学科( ■ ■年度奨励研究助成(若手研究者枠)■■■ ■ ■■■■■■ )准教授東雄一2.実験方法衝撃圧力波の速度までは解析しておらず,水圧室内の挙動まで評価・分析した報告は他にもない5).衝撃水圧成形法における伝播速度を明らかにすることで,衝撃水圧成形法における高ひずみ速度域における金属材料の定量評価が可能となることが期待できる.そこで本研究では衝撃圧力波を可視化することで打ち出し圧力と伝播速度の関係を明らかにし,伝播速度を衝撃水圧成形法の加工パラメータの■つとして確立させることを本研究の目的の■つとして,衝撃圧力波の可視化実験を行った.■・ 高速変形挙動の■■■■■■■観察本研究で応用している衝撃水圧成形法では金属板の深絞り加工を行うことができるが,衝撃水圧成形法において金属の変形は金型内部で起こっており,衝撃弾を発射させてから金属が変形するまでの時間が非常に短く,加工プロセスが超高速であることから,金属材料が変形するプロセスの観察が困難であり,金属材料のひずみ速度や変形挙動などが不明である.そこで,衝撃水圧成形法における材料の変形挙動を可視化し,変形のプロセスを明らかにすること及び材料のひずみ速度を明らかにすることをもう■つの研究目的として実験を試みた. ・■衝撃水圧成形装置図1に衝撃水圧成形装置の概略図を示す.この装置は,以下に示す動作原理で材料の加工を行う.①空気ボンベから貯気槽に充填された高圧の圧縮空気が電磁弁の開放により装填室に高速で流れ込む.②装填室にあらかじめ装填されていた衝撃弾が,装填室に流れ込んできた圧縮空気により発射され,高速で水圧室に向かって走行管内を走行する.③発射された衝撃弾は,走行管内を進み水圧室内の水を打撃する.図1衝撃水圧成形装置の概略図− 342 −圧縮空気をエネルギー源とした衝撃水圧成形法における衝撃圧力波の可視化と高速変形挙動の■■■■■■■観察
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