天田財団_助成研究成果報告書2024
342/508

1G, 10G,16G (G=9.81)50 W50, 75, 82.525, 1007.04, 31.3SUS316L3.実験結果 ・ 実験条件本研究では表1に示す造形条件において実験を行った.一般的なPBFの実験においては,レーザ出力や走査速度などのパラメータを変えて,最適造形条件の探索などが行われれる.本研究の目的は重力加速度がプロセス安定性に与える影響の評価であるため,重力加速度と走査速度を変化させて,造形物の機械特性などを評価する.表1造形条件重力レベル[m/s2]レーザ出力[W]走査速度[mm/s]1層当たりの高さ[μm]粉末の平均粒径[μm]粉末材料■ライン造形実験■・■10G場で造形をした場合において,31.3 μm粒径粉末で100 μm高さ1ライン造形物に生じる変化について議論する.デジタル顕微鏡を用いて得た造形物の外見とプロファイルデータをそれぞれ図6,7に示す.図6■ライン造形物の外観図7■ライン造形物のプロファイル高く,ビードが途切れてしまう問題をボーリング現象と呼ぶ.1G場では,ボーリング現象が顕著に見られたのに対して,10G場では高低差の変動が残るものの,連続的なビードを形成できていることがわかる.ビードの丸まりは表面張力によって生じるが,これを抑える方法として,界面活性剤によって表面張力を小さくするか,重力加速度を高めるなどの工夫が考えられる.高重力場では,付加的な材料を添加することなく,任意の材料組成に対してもビードの連続性を確保できることから,高重力場3D造形は,造形物の面精度を高める上で,極めて実用的なアプローチといえる.■■■■μ■微細粉末リコート試験■・ 先述のとおり,30μmよりも小さな粒径をもつ粉末は,粉末粒子をステージに押さえつける重力よりも,凝集や飛散に寄与する静電気力や抗力の影響が大きくなる.したがって,微細粉末を用いてPBFを安定的に実行することは困難となるが,本研究では重力加速度を高めることで粉末粒子にかかる重力を再び支配因子にすることから,30μm未満の微細粉末を用いても安定的に造形ができる.図8に,1G場,10G場,16G場でそれぞれ7.04 μm粒径の粉末でベースプレート上に粉末層を形成した結果を示す.なお,1層当たりの高さは25 μmに設定した.ベースプレートをアルマイト処理によって黒く着色しているため,SUS316L粉末を敷くと,十分に粉末が供給されていない領域が黒く見える.実験結果からわかるとおり,1G場においてもまったく粉末層を形成できないわけではなく,とくに1層だけをベースプレート上に形成するなら,粉末粒子・ベースプレート間のファンデルワールス力などにより,高いリコート率を示せている.しかしながら,複数層を形成していくと,粉末粒子間のファンデルワールス力や静電気力の影響が大きくなり,粉末層を正常に形成できなくなった.一方で,重力加速度を高めた場合,粉末層の見た目からもわかるとおり,凝集を抑制できており,複数層を重ねても高いリコート率を示している.以上から,高重力場は造形プロセスの安定性を高めるために有効であることが明らかとなった.図8各重力加速度における粉末層形成の様子1G場で造形を行った場合には,いずれも高低差が激しく変動している区間が確認できた.溶融金属の表面張力は− 340 −

元のページ  ../index.html#342

このブックを見る