た,同手法を用いることでSiO2基板の裏面に吸着させた自己組織化分子膜の観測も可能であることを確認し,埋没界面観測のための手法の開発・高度化を達成することに成功した. 図4.3パルス法を用いた時間遅延非線形ラマン計測スキームによるサブナノメートル厚さのモデル界面分子系(ベンゼンメタンチオール自己組織化単分子膜)の計測例.(a)時間遅延をほとんどかけていない場合のバックグラウンドスペクトル,(b)500 fs程度の適切な遅延時間により強度低下させたバックグランド信号と界面分子系の振動応答信号の干渉パターン. 図5.サブナノメートル界面分子系Imχ(3)スペクトル. 量子ビーム照射による表面活性化界面接合法(図2)では,表面アモルファス層の存在が界面接合の形成において本質的に重要であり,そのアモルファス層の結晶化が高強度・高耐久界面の実現の鍵となる.そこで我々は,表面活性化プロセスの違いによる表面アモルファス層の微視的構造・状態の差異を捉え,その結晶化(相転移)を追跡可能とする分光計測ノウハウの構築にも取り組んだ.具体的には,3パルス時間遅延非線形ラマン分光スキームに立脚し,アモルファスSiO2の不均一構造特徴量である多員環構造(中距離構造秩序)の定量評価法を開発した.図7に示すように、プローブパルスの遅延時間0 fsにおいてはブロードな非線形ラマンスペクトルが観測されている.しかし,プローブパルスの遅延時間の増加と共に,減衰が顕著に観測される成分と減衰がほとんど無視できる成分が存在することが明らかになった。これは,多員環構造の違いに起因して振動コヒーレンス寿命の違いがフェムト・ピコ秒時間領域において顕著に表れることに起因する.この現象を踏まえて,適切な時間遅延を設定することで,不均一アモルファス構造に起因したブロードなスペクトルを員環構造別にスペクトル分割することが可能となった(図6).現在我々は,真空環境下で表面活性化処理された結晶SiO2試料(クォーツ)に対する10 nm程度の厚さのアモルファス層のスペクトル測定にも成功するに至った. 図6.3パルス非線形ラマン分光法による,アモルファスSiO2ネットワークにおける多員環構造不均一性のスペクトル解析結果. これらの分光計測法の高度化に成功すると共に,量子ビーム照射による表面活性化過程及び接合過程のin-situ界面観測に特化した計測システムの構築にも取り組んできている.その際に,接合用試料の調整及びセッティング時に大気中の塵の付着を防ぐクリーンな環境の整備が必要不可欠であるため.試料調整スペースと接合チャンバー・分光システムを覆うクリーンブースの導入を行った.また,真空中の試料に対する分光用のレーザーパルスの誘導及び分光信号の補足をスムーズに行うために,真空中で駆動可能な電動ステージを導入した.これにより,軸外し放物面鏡の精密な位置調整をチャンバー外からリモート操作で可能な状況を整えることができた. その上で,表面アモルファス層の形成過程及び結晶化過程の観測により適した計測配置を見出すために,光学材料の屈折率に応じて光パルスの入射角を系統的に変化させた計測を実施した.その結果,ブリュースター角近傍の入射角θの条件では,バルク由来の非共鳴信号が最も小さくなりナノスケール界面由来の振動共鳴ピークが克明に観 − 332 −
元のページ ../index.html#334