差が小さく,溶接速度が増加するほど引張せん断強さの平均値が増加する傾向が見られた.一方,上板がMgの場合は同一の実験条件における実験結果の差が大きく,引張せん断強さの平均値は増減を示した.この実験における最大継手強度は89.5 N/ mmであった. ■ここで,継手強度に影響を与える要因について調査するために,接合部断面に生成した金属間化合物に着目した.図7(a)に示すように,赤色で示される金属間化合物の断面積Aを測定し,接合幅Wで除することにより金属間化合物の平均厚さを求めた. 2) 上板の材質に関わらず,Mg母材側には黒色の界面組織,Al母材側には白色の界面組織が観察された.また,図7(b)に金属間化合物の平均厚さと引張せん断強さとの関係を示す.上板がMgの場合を青色,上板がAlの場合を赤色で示している.上板がAlの場合,上板がMgの場合よりも相関係数が高くなっており,Alが上板の場合では金属間化合物の平均厚さが薄いほど継手強度が増加することが分かった.一方,上板がMgの場合,上板がAlの場合よりも相関係数が低くなっている. ■そこで次に,金属間化合物の平均厚さではなく接合面積に着目した.図8(a)は引張せん断試験後の接合部の破断面を示しており,図中に赤線で囲まれた領域を接合面積として測定した. ■図8(b)に接合面積と引張せん断強さとの関係を示す.赤色で示される上板がAlの場合は,上板がMgの場合よりも相関係数が低くなっている.一方,青色で示される上板がMgの場合は,上板がAlの場合よりも相関係数が高くなっている.したがって,上板がMgの場合では接合面積が増加するほど継手強度も増加することが分かった. ■以上の結果より,継手強度に影響を与える要因は,上板がAlの場合は金属間化合物の平均厚さ,上板がMgの場合は接合面積であることが示唆された. 4.結言 ■マグネシウム合金とアルミニウム合金とのレーザロール溶接に関する基礎的研究を行った結果,以下の結論を得た. 1) レーザ出力1.5 kWでは,上板がAlの場合よりもMgの場合の方が高速で溶接することができた.また,上板の材質に関わらず,レーザ出力が増加すると溶接可能な最大速度が増加した. − 323 −
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