際,溶接条件を変化させてレーザロール溶接を行い,それの接合性への影響について検討した.また,作製した継手の継手性能を調査し,溶接条件と継手性能との関係を実験的に明らかにすることを目的とした. 2.実験方法 ■ ・■■供試材■■供試材として,板厚1 mmのアルミニウム合金板AZ31Bおよび同板厚のアルミニウム合金板A5052Pを使用した.供試材の寸法はいずれも40×140 mmとした.AZ31BおよびA5052Pの化学組成を表1に示す. ■表面前処理として,両板材の接合面を400番のエメリー紙で研磨し,酸化膜除去を行った後,エタノールで脱脂処理をした.レーザを照射する板表面には,レーザの吸収率を高めるためにグラファイトスプレーを塗布した. ■ ・ ■レーザロール溶接実験 ■本実験では,定格出力2 kW,波長10.6 µm,連続発振型のCO₂レーザ発振器を用いた.図1に示したように,レーザ装置に平面反射ミラーとローラ加圧装置を組み合わせた装置を用いて実験を行った.発振されたレーザ光を,焦点距離200 mmのZnSe製集光レンズによって集光し,平面反射ミラーにて反射させた後,角度をつけて板材へと照射した.供試材の設置方法について,上板がマグネシウム合金,下板がアルミニウム合金の場合と,上板がアルミニウム合金,下板がマグネシウム合金の場合の2通りとし,図2に示すように設置した. ■ ・■■溶接条件 ■溶接条件を表2に示す.本研究の実験条件として,レーザ出力を1.5および2 kW,溶接速度を10~40 mm/sの範囲で変化させて実験を行った.ローラ加圧力を0.5 kNで一定とし,上板と下板との重ね代は4 mmとした.また,シールドガスにArを用い,流量を20 L/minとした.前述のように,供試材の設置方法,すなわち上板の材質を2通りで実験した. 3.実験結果および考察 ■■・■■溶接可否■■表3に,プロセスウィンドウを示す.(a)は上板がMgの場合,(b)は上板がAlの場合の溶接可否であり,○印は継手が得られた条件,×印は継手が得られなかった条件をそれぞれ示している. ■レーザ出力1.5 kWでは,上板がMgの場合は溶接速度30 mm/sまで,上板がAlの場合は溶接速度25 mm/sまで継手を得ることができ,継手が得られる最大の溶接速度に差が生じた.これは,熱伝導率がMgよりもAlの方が大きく,レーザ照射により加熱された上板において,下板に伝えるべき熱が溶接部から逃げやすいことが関係しているものと考えられる.一方,レーザ出力2 kWでは上板の材質に関わらず,溶接速度35 mm/sまで継手を得ることができ,レーザ出力の増加により溶接可能な最大速度も増加した.これは,同一の溶接速度においてレーザ出力の増加により入熱が増加したことによるものと考えられる. − 321 −
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