キーワード:レーザロール溶接,マグネシウム合金,アルミニウム合金 機器の軽量化が求められている.そのための新たな切り札として,マグネシウム合金の利用が期待されている.マグネシウムは構造用材料として使用される金属材料中,最軽量材料であり,高比強度,高リサイクル性など優れた特性を持つ.一方,マグネシウムは燃焼しやすいという欠点もあるが,最近では高い機械的性質を持ちながら,耐熱性や不燃性を有しているKUMADAIマグネシウム合金1)が開発され,今後,マグネシウム合金の利用が拡大することが予想される. ■実際にマグネシウム合金を輸送機器に用いる際は,マグネシウム合金と他の材料とを適材適所に配置した,材料ハイブリッド構造が有効であると考えられる.なお,現在の自動車の軽量化手段としては,コスト面や軽量化効果のバランスを考慮するとアルミニウム合金を利用することが最も有効な手段2)とされていることから,将来的にマグネシウム合金とアルミニウム合金との接合部が確実に増加し,それらを高い信頼性と生産性で直接接合する技術が必要不可欠となる. ■しかし,従来の接合法でこれらを接合すると,接合部に脆性な金属間化合物が生成することにより,継手としての性能が悪化することから,接合が困難であることが知られている.そのため,マグネシウム合金とアルミニウム合金1.緒言 ■近年,地球環境の問題から,自動車をはじめとする輸送三重大学■大学院工学研究科■( ■ ■年度■一般研究開発助成■■■■ ■ ■ ■■■■ )■助教■尾崎■仁志■との接合法は未だ確立されていない.また,国内外において抵抗スポット溶接3),摩擦攪拌接合4),爆発圧接5),レーザ溶接6)により両金属の直接接合が試みられているが,接合界面ではなく母材金属において破断するような良好な結果が得られていない. ■そこで本研究では,異種金属接合に有効であるレーザロール溶接法をマグネシウム合金とアルミニウム合金との接合に適用することを試みた.本溶接法は図1に示すように,沓名らによって開発された,レーザとローラを組み合わせた装置により重ね継手の線溶接を行う方法である.これまでの研究で,接合が困難とされていた金属の組合せを接合可能としてきた7-10).その際,レーザロール溶接法による異種金属接合のメカニズムについても一部明らかにした.本溶接法では異種金属の組合せにより,現在のところ3種類の接合メカニズムが確認されている. ①両金属の融点が大きく異なり,界面層として主に金属間化合物が生成する場合 ■例)アルミニウム合金と低炭素鋼7),アルミニウム合金と純チタン8) ②両金属の融点よりも低温で共晶反応が起こり,界面層として主に共晶が生成する場合 ■例)純チタンと低炭素鋼9) ③両供試材の主成分が平衡状態図において二相分離を示し,一方の供試材の合金元素と他方の供試材との固溶体または金属間化合物による界面層が生成する場合 ■例)マグネシウム合金と低炭素鋼10) ■本研究で取扱うマグネシウム合金とアルミニウム合金とのレーザロール溶接においては,両金属の融点の差は小さく,両金属の融点よりも低温で共晶反応が起こりうるため,上記②に該当する可能性がある.そこで文献を調査すると,生成した金属間化合物に関する記述は多くあったが,接合により共晶が生成するか否かは不明であった.よって,マグネシウム合金とアルミニウム合金とのレーザロール溶接の接合メカニズムは,上記①~③に該当しない,新しいタイプである可能性もあり,学術的にも興味深い. ■そこで本研究ではまず,融点の差が小さい両金属の重ね継手を作製する上で,レーザを照射する金属,すなわち図1におけるUpper plateをマグネシウム合金板とアルミニウム合金板のどちらにすればよいかに関する知見がないため,両方のパターンでレーザロール溶接を試みた.その − 320 −マグネシウム合金とアルミニウム合金との レーザロール溶接に関する基礎的研究
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