天田財団_助成研究成果報告書2024
313/508

光結合効率が著しく劣る。近年では産業用の加工用光源としてファイバーレーザーが主流になりつつある情勢を鑑みると、ビーム品質に優れ、集光性の良い光源の需要が高まると考えられる。提案する光源技術は、波長2.5~3.8µmの広帯域光源を実現するために、ErとDyを共添加したフッ化物ファイバーを用いている。本手法の特徴はErからDyへのエネルギー移動を利用することで、安価な市販のレーザダイオード光源(0.98µm)でErとDyの励起を達成している。また本光源の模式図を図1に示すように、極めてシンプルな構成で安定出力可能な広帯域中赤外光源を実証している。提案する光源技術はSCL光源とは異なり、装置起動後の光学調整が一切不要であるため、ターンキーオペレーションが可能である。そのため、本光源が実用化されれば、光学分野に不慣れな異分野の技術者であっても光学素子の検査や光学実験の成功率が向上すると期待できる。本研究の目的は、提案するASE光源の実用化を目指し、提案手法のさらなる高度化である。具体的にはフッ化物フSCL光源については理想的な光源特性を有しており、市販化される向きもあるが、安定性と装置単価が設備導入の妨げになっている。ASE光源については、出力や波長安定性に優れているが、市販品の中赤外光源の波長帯は2.2µm以下であり、要求を充たしていない。黒体放射光源は、原理上の制約として集光性が悪く、特に光ファイバーへの図2各濃度における蛍光スペクトル図3開発した中赤外ASE光源の概略図ァイバーへの添加濃度の最適化とErとDy間の準位間のエネルギー移動のプロセスについて調べる。これにより、添加濃度、ファイバー長、励起パワーといった条件の設計指針を明確にし、より効率的なASE光の発振と低コスト化を試みる。装置単価の目標は、筐体や制御装置も含めて黒体放射光源と同程度(50万円以下)の価格帯を目標としている。提案する光源の特徴はErとDy間の準位間のエネルギー移動を利用することで、市販の安価な976nmLD(半導体レーザー)により、中赤外光を出力可能なことである。これまでの研究により、フッ化物(ZBLAN)ガラス材料を新たに作製し、両元素の添加濃度の選定を行った。具体的には図2に示すように、Er濃度0%の場合にはDyの発光は確認できず、Er濃度1%以上ではDyの発光が認められた。このことから、両者の元素を共添加することでErからDyへのエネルギー移動によりDyの発光が可能であることを確認した。つづいて、このガラスをコア材に用いたダブルクラッド型ZBLANファイバーを作製し、図3に示す構成でLD励起のASE光源を構築した。この光ファイバーは、コア径が15μm、第一クラッド径200μm、樹脂からなる第2クラッドの直径は400μmであり、コア及び第一クラッドの開口数はそれぞれ0.12と0.5に設計した。励励起起光光2.光源装置の設計(1st cladding)λ=976 nmsilica fibercore: 105 μmダダブブルルククララッッドド((断断面面))コア:15 μm第一クラッド:200 μm励起光吸収係数:2.0 dB/m− 311 −Er/Dy共共添添加加ZBLANフファァイイババーーASE出出力力LD

元のページ  ../index.html#313

このブックを見る