天田財団_助成研究成果報告書2024
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𝜎𝜎𝐿𝐿=k(𝑀𝑀𝜌𝜌)−23(𝑇𝑇𝑐𝑐−𝑇𝑇)4.結論変動は無く造形することが出来た.今回の試験結果では,サンプルサイズに適した入熱が出来たものと考えられる.3・4純銅造形における欠陥形成の考察SUS基板上に純銅層を形成した本実験では,初層では銅粉にレーザを照射すると,銅粉は基板上で溶融する場合と,銅が造形された上に銅層を造形する場合が考えられる.溶融銅の濡れ性は,溶融銅の温度および基板の温度に依存する.ここで濡れ性の指標である接触角θは,ヤングの方程式によって次式で表すことができる図11.ここで,固相液相表面張力γsoおよびγSLはそれぞれ固体および液体の表面張力であり,γlgは固体および液体間の界面張力である.一般に,液体の表面張力の温度依存性はエートヴェーシュの式で表される(式2).ここで,σLは液体の表面張力,Mは分子量,ρは密度,Tcは臨界温度,Tは絶対温度,kは定数(≅2.1)である.式(2)において,温度Tの勾配は,■■■𝑑𝑑𝜎𝜎𝑆𝑆𝑑𝑑𝑑𝑑=−k(𝑀𝑀𝜌𝜌)−23■■(3)となり,温度Tが増加すると液相の表面張力σLは減少することがわかる.従って,レーザの入熱量が増加して基板温度が上昇すると接触角が小さくなり,基板に対する溶融銅の濡れ性が向上したと考えられる.SUS基板近傍での溶融銅の挙動は,SUSは熱伝導率が低いため,溶融銅とSUS基板の温度は高くなる.その結果,溶融金属は基板上に濡れ広がり,緻密な層を形成する.入熱量が高くなり過入熱となると,基板が溶け,FeとCuの金属間化合物層が形成されてしまい,これがクラック等の発生原因となった.一方,積層数が多くなり銅層上への溶融銅は,銅の熱伝導率が高いため,銅層と溶融銅の温度が低くなり,濡れ性が低下する.濡れ性が低下すると接触角θが大きくなるので,これがボイドや層間剥離層の形成要因となってしまう.入熱量が高くなると,基板側の温度と溶融銅の温度が上がり,濡れ性が向上し,緻密な造形が出来たものと考えられる.従って,積層体図11基板と溶融銅の濡れ性■■(1)(2)積に適したレーザの入熱が造形欠陥の防止に重要な因子となることがわかった.3・5純銅のラティス構造の積層造形局所的な造形体積の小さいラティス構造の造形を試みた.図12に造形した純銅ラティス構造を示す.造形サイズは,27×27×27mmで密度がおよそ1/4になるように設計した.その結果,造形密度が4.4g/cm3のラティス構造の3D造形をすることが出来た.本報では,AM技術の1つであるSLM法に青色半導体レーザを用いることで,これまで造形が難しかった純銅の積層造形に取り組んだ.特に純銅の高温における光反射率を実験的に解析するとともに,純銅の積層造形においてレーザ入熱量が純銅の造形に及ぼす影響についてまとめた.1)純銅の融点近傍の反射率を測定した結果,450nmで38%,1064nmでは52%反射率が減少することがわかった.2)純銅の造形したサンプルの相対密度を測定した結果,造形体積が大きくなるほど,相対密度が減少する傾向にあることがわかった.3)純銅の積層造形において入熱量を5層目から変えた造形サンプルでは相対密度が99%となり最も相対密度が高い造形物となった.従って積層体積に適したレーザの入熱が造形欠陥の防止に重要な因子となることがわかった.純銅は,電気自動車をはじめとしたカーボンニュートラル社会構築のためのキーマテリアルとして注目されており,それに併せて純銅のレーザ加工の需要がますます高まっている.そのような状況の中で,青色半導体レーザを用いた純銅の積層造形を実現した本研究成果は,純銅の設計の自由度が高くなることに加え,従来の加工方法では実現できなかった高付加価値製品を作り出す事が可能となり,真の意味のテーラーメードものつくりを実現する技術となり得る.図12純銅のラティス構造の造形− 308 −cos𝜃𝜃=𝛾𝛾𝑆𝑆𝑆𝑆−𝛾𝛾𝑆𝑆𝑆𝑆𝛾𝛾

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