3.結果および考察3・1高温下における銅の反射率測定結果室温から1100℃までの温度領域における純銅表面の相対反射率の測定結果を図5に示す.測定波長は450nmと1064nmとした.800℃までの温度領域では,450nmでは3%,1064nmでは,2.5%反射率が増加した.さらに融点近傍の相対反射率に関しては,液相表面はゆらぎの影響を防ぐため,測定光源をパルス駆動し,CCDカメラでモニタリングしながら反射率を測定した.純銅の融点近傍の相対反射率は,800℃から1100℃では450nmで38%,1064nmでは52%減少した.ここで測定前後のサンプル表面のXPSによる表面の定性分析を行った.その結果,測定前のサンプル,つまり加熱前のサンプル表面には,CuピークととともにCu(OH)2,CuCO3のピークと推定される僅かなピークが見られた.一方,加熱後のサンプルではCu(OH)2,CuCO3のピークが消失し,Cu2Oの僅かなピークが見られた.このCu2Oに関しては,表面をエッチングして酸化深度を測定した結果,7nmであった.銅は加熱すると酸化されるため,今回の測定においては若干のCu2Oが混在する反射率となった.相変化による反射率の減少は,化学的変性を伴っているが銅のピークに比べてCu2Oのピークが小さかったため融点近傍での反射率の減少は十分優位な差であったことが伺える.図5銅層相対反射率の温度依存性3・2純銅の積層造形における造形体積の影響図6に,造形サンプルの幅と積層数をパラメータに造形体積を変えたときの外観を示す.積層長さは10mmに固定し,積層幅は1~5mm,積層数は8~32層とした.図6に示す様にSUS基板上にこれらのパラメータで造形した.造形した試料をそれぞれ切断して相対密度を測定した結果を図7に示す.その結果,積層幅が1mmで層数が8層の場合,相対密度は99.5%であったが,層数を16層に増加すると相対密度は99.5%となり,層数が増えると相対密度が減少することがわかった.積層幅3mmと5mmの造形サンプルを比較したところ,密度はそれぞれ98.6%,98.1%となり,積層幅,積層層数が増えると相対密度が低下する傾向がみられた.ここで図7を体積に換算した結果を図8に示す.銅造形の体積が大きくなるに従って,相対密度が低下する傾向にあることがわかった.また,積層総数が増加して体積が増加したときに造形欠陥である空隙や層間剥離は上層に多くみられた.図6造形サンプルの外観(積層数■~■ 層,幅■~■■■)図7造形体積に対する相対密度依存性図8造形体積に対する相対密度− 306 −
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