1.はじめに2.カロリメトリ法による各種金属材料の実践的なレーザ吸収率の測定キーワード:パルスファイバーレーザ,レーザ吸収率,金属ガラス近年パルスファイバーレーザは、表面処理、溶接、切断をはじめとする様々な金属加工に用いられている。加工部の金属組織はレーザ条件によって大きく影響を受けるため、レーザ照射部の温度履歴と分布を予測しておくことは重要である。この予測を行うには初期条件として被加工材がレーザから吸収した熱量のデータが必要であるが、実際のパルスレーザ加工ではレーザスポット部の急激な温度変化、温度分布の不均一性、スパッタなどが生じるため直接測定することは困難である。そこで本研究では第1段階としてシリコーンオイルに浸したCu、Ti、Zr55Al10Ni5Cu30金属ガラス試験片にレーザ加工を行い、オイルの温度履歴から各種金属材料の実践的なレーザ吸収率の測定を行った。また被レーザ加工材料として非平衡金属材料の代表格である金属ガラスに着目した。金属ガラスはアモルファス合金の中でも特にガラス形成能が高く、明瞭な過冷却液体状態を示す合金の総称である。金属ガラスはある特定の合金を液相から合金固有の臨界冷却速度Rc以上で急冷すると得られる(Zr55Al10Ni5Cu30金属ガラスのRcは1~10 K/s)。これに適切な条件でパルスレーザを照射すれば、照射部は瞬時に溶融または蒸発した後にただちに急冷されるため、周囲への熱影響を最小限に抑えつつ、任意の区画を選択的にアモルファス化することができると予想される。この手法を用いれば例えば新規金属ガラス合金の探索実験において、試作した結晶母合金で鋳造を行うことなく直接金属ガラス化して評価できるため、合金成分の最適化を迅速に行えるようになる。また金属ガラスのレーザ積層造形(AM)への応用も期待できる。そこで第2段階として意図的に結晶化させたZr55Al10Ni5Cu30合金(母材)にレーザ照射を行い、選択的アモルファス化を行うとともに構造解析を行った。 ・■実験装置図1に実験装置を示す。レーザモジュールには波長1064 nmのパルスファイバーレーザを用いた。レーザ焦点位置はガルバノスキャナにより試験片表面を移動させることが可能であり、さらにレーザパルスとタイミングを同神奈川大学工学部機械工学科( ■ ■年度一般研究開発助成■■■ ■ ■ ■ ■■■)准教授寺島岳史期することで自由な描画が可能である。試験片はCuとTiはφ21×t2 mm 、Zr55Al10Ni5Cu30金属ガラスはφ20×t2 mmを用いた。実験容器はステンレス真空断熱容器を用い、その中をシリコーンオイルffKF96-50CS■で満たした。一端に試験片を接着したフランジを容器内側に接続し、試験片が完全に沈むように設置した。オイルは115gとし、スターラで攪拌した。オイル温度はK熱電対を試験片と同じ高さに設置して測定した。レーザ条件は繰返し周波数200 kHz、パルス幅100 ns、レーザ走査速度8000 mm/sとした。レーザ出力は20、40、60、80、100 Wのそれぞれについて行った。レーザ照射は加熱スポットが片寄らないように試験片全面を均等に走査して行った。実験はレーザをonにしてオイル温度が30 ℃から180 ℃になるまで照射を続け、その後レーザをoffにして再び30 ℃になるまで自然冷却させた。この間、オイル温度を1 sごとに記録した。 ・ 評価方法レーザ照射後の試験片の表面形状は走査電子顕微鏡(SEM)で観察した。また試験片がレーザから吸収した熱量は次のように算出した。図2に実験系に対するエネルギーバランスを示す。レーザがonの時のオイルの熱量変化cmdTは、試験片がレーザから吸収した入熱量Padtと、オイルから放出した放熱量Q(T)dtと、スパッタで系外に散失した熱量HvapdMのバランスより(1)で表される。図1実験装置− 291 −パルスファイバーレーザ照射による金属ガラス合金のアモルファス化および温度履歴解析
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