■ ■図10.出力特性(a)スペクトルと(b)パルス幅 パワーを300 mWまで上げたのちに200 mWまで上げることでシングルパルスを得ることができた.このときの平均出力は3.7 mWであった.一度,シングルパルス動作が得られるとモード同期動作は安定した.最も対称なスペクトル形状が見られたポート1の出力パルスのスペクトルとパルス幅を図10に示す. 中心波長1563 nmに対してスペクトル幅は14.3 nmであり,パルス幅は1.6 psであった.共振器は異常分散ファイバのみで構築したため,スペクトルにケリーサイドバンドが観測された.ケリーサイドバンドを除去するためには,共振器内の分散値をゼロに近づける必要がある.一方,増幅器に入力する前に帯域制限フィルタを透過させるとケリーサイドバンドが生じる波長域を抑圧することができ,スペクトル形状を均一にしながら増幅できると考えられる.また,さらなる低繰り返し化に関しては,先に述べた散逸ソリトン動作を用いる必要があるため,共振器内に長さ数10 mの正常分散ファイバを融着することで,実現できると見込んでいる. ■つぎにPTS-OCTの開発を目指した分光システムについて述べる.PTSは,媒質中を光パルスが伝搬する際の群速度分散を利用してスペクトル情報を時間軸上に射影することで実現する.そこで長さ4.2 kmのシングルモードファイバ(Single mode fiber: SMF)を使用してPTSを行い,高い時間分解能を有する光検出器とオシロスコープを用通り,チャープした光パルスがNBFを通過するとスペクトル幅が制限されると同時に光パルスのパルス幅も切り出されて短パルス化されるためである.実際,図6に示すようにBPF前後のパルス幅はそれぞれで8 psと2 psであり,NBFを用いることでパルス幅は4分の1まで短縮されていることを確認している.このことから増幅器に入力される光パルスのハルス幅が短くなったことで,増幅器内において光パルスは増幅されると同時にSPMによりスペクトル幅がより広がったことを示している.一方,NBFの有無によるパルス圧縮後の平均出力は, それぞれ292 mWと370 mWであった.これは入力の光パルスの平均出力がBPFを用いることで低くなったことに起因する.その一方で,ピーク強度はBPFを用いたとき,0.35 MWそしてBPFを使用しないときは0.16 MWと算出される.このことからBPFを用いることで約3倍のピーク強度の増大に成功した. 図8.パルス圧縮後のパルス幅 図9.全偏波保持Erファイバレーザーシステム つぎに低繰り返し動作可能な光源の発振波長を1030 nm以外でも実現するために波長1550 nm帯における3×3カプラを用いた全偏波保持Er添加ファイバレーザーの開発も進めた.図9に開発したシステムの構成図を示す.発振器はPMファイバのみで構成されており,共振器長は4.8 m,Er添加ファイバー(EDF)は1.0 m,共振器全体の分散値は-0.082 ps2である.励起LDのパワーと位相シフタ(𝛥𝛥𝛥𝛥)の調整によりモード同期を実現する12).モード同期動作が得られたときパルスの繰り返し周波数は43 MHzであった.シングルパルスを得るためにLDの励起− 277 −
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