■■NBFにおけるパルス整形を確認するためにオートコリ出力安定性と同程度の高い出力安定性であった. パルス圧縮後のパルス幅をさらに短くするために増幅器内にて引き起こされる自己位相変調(Self-phase modulation: SPM)を利用した広帯域増幅に取り組んだ.発振器から出力された光パルスを正常分散ファイバに入射させると正の分散が付加されて,光パルスは線形チャープを有する.ここで十分長い正常分散ファイバを伝搬した際のチャープした光パルスの波長と時間の関係を図5に示す. 図5.帯域制限フィルタによるパルス整形 図5(a)に示すように光パルスに対してBPFを透過させると,図5(b)に示すように光パルスのスペクトル帯域は制限される.それと同時にパルス幅も切り出されて短くなる.これはチャープした光パルスは時間軸上に波長ごとに整列して伝搬するためである.光パルスのチャープの量とBPFの透過帯域を制御すると時間帯域積幅がフーリエ限界に近い光パルス幅が得られる.この光パルスをYbファイバ増幅器に入射すると入射光の短パルス化に伴い増幅器内において,光パルス増幅とSPMが同時に引き起こされて,スペクトル幅を広げることが可能である.また,SPMでスペクトルを広げた光パルスは線形チャープを有することから,回折格子を用いて広帯域化した光パルスはパルス圧縮が可能と考えられる.そこで開発した発振器から出力された光パルスが正常分散を有しており線形チャープしていることに着目し,図1における発振器と増幅器の間に中心波長1036 nm,帯域幅3.3 nmのNBFを設置した.なお,増幅器は長さ1.2 mの偏波保持YDFと波長976 nmの励起LD(最大パワー900 mW)を用いて,その構築を行った.その後,FC/APCコネクタとコリメータレンズを用いて,光パルスをフリースペースに取り出して,回折格子対で構築したパルス圧縮器にてパルス圧縮を行った. レータを用いてNBF通過前後のパルス幅の計測を行った.その結果を図6に示す.NBF透過前のパルス幅は約8 psに対して,NBF透過後のパルス幅は2 psであった.これはチャープした光パルスがNBFを通過することでスペクトル帯域が制限されると同時にパルス幅が切り出されることで光パルスのパルス整形が実現されたことを示している.なお,NBF通過後の光パルスエネルギーは,約1 nJであった.この結果から,短パルス化された光パルスが増幅器内において増幅されながらSPMを引き起こすことで広帯域増幅されることが期待できる. 図7にBPFを通過した直後の光スペクトルとBPFの有無による増幅後の光スペクトルを示す.NBFを通過したスペクトルは中心波長1036 nmにおいて帯域幅3.3 nmであった.スペクトル形状に複数のピークが見られるが,これらのピークは発振器から出力される光パルスのスペクトル形状に起因するものである.NBFを用いた増幅後のスペクトル形状は,非対称かつ波長1022 nmにおいてピークが見られるが,スペクトルの裾は波長1015 nmから1065 nmまで広がっている.一方,NBFを使用しない場合は,波長1030 nmと1035 nmにおいてピークが観測され,さらにスペクトルの裾の広がりは,波長1020 nmから1045 nmまでにとどまっていた. 図8に増幅後の光パルスを回折格子対にてパルス圧縮した結果を示す.NBFを用いたときのパルス幅は125 fs,NBFを用いなかったときのパルス幅は350 fsであった.発振器から出力された光パルスを回折格子対にてパルス圧縮したとき,パルス幅は230 fsであった.NBFを用いたときのパルス幅が短くなる理由は,図5の説明で述べた図6.NBF透過前後のパルス幅 図7.増幅後のスペクトル − 276 −
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