天田財団_助成研究成果報告書2024
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2.実験方法と結果 ■図1に開発したモード同期ファイバレーザの構成図をこの問題を解決するために偏波保持ファイバを用いて,モード同期動作が可能な非線形ループミラーと散逸ソリトン構成を融合した新しいモード同期レーザーを開発して,この光源を用いてPTS-OCTの開発に取り組み,従来技術では実現できないMHzのフレームレートで動作可能な可視化技術の実現を目指すことが,本研究提案の最終目的である.この開発したPTS-OCTを用いれば,レーザー加工最中の材料内部の断層撮影が可能となり,レーザー加工物理の理解に貢献できると考えられる. 図1.実験配置図 示す.発振器のモード同期機構は非線形ループミラー(Nonlinear amplifying loop mirror: NALM)を用いた.このモード同期機構の利点は偏波保持ファイバを用いることができる点と低い繰り返し周波数動作による高エネルギーパルス生成が可能な点である.波長976 nmの励起LDにてYbファイバを励起し,光アイソレーターはメインループ側にて光が図中において時計回りに伝搬するように設定している.メインループとNALMループを接続するカプラは,効率的にモード同期動作が得られるように分岐比60/40の非対称比率カップラを用いた9-11).この発振器において,散逸ソリトン動作を実現するためにメインループ側に狭帯域波長制限フィルタ(Narrow bandpass filter: NBF)を挿入した.NBFの帯域幅は約3.3 nmとした.低い繰り返し周波数を実現するためにNBFとPM-WDMの間に長さ10 mから25 mの偏波保持シングルモードファイバ(Polarization maintained fiber: PMF)を融着して,モード同期動作の有無を確認した. メインループとNALMループの励起LDパワーを170 mWと175 mWにしたとき,モード同期動作を得ることに成功した.図2に得られたスペクトルを示す.中心波長1030 nmに対してスペクトル幅10 nmであった.また,溝数1200 lines/mmの透過型回折格子対を用いて,パルス圧縮を行った.その結果を図3に示す.回折格子対を用いた圧縮後の光パルスのパルス幅は300 fsであった.図4に得られたモード同期動作におけるパルストレインを示す.得られた繰り返し周波数6.6 MHzと出力される光パルスの平均出力48 mWから算出される光パルスのエネルギーは7.3 nJであった.特筆すべき点として,モード同期機構にNALMそして散逸ソリトン動作が実現できる共振器構造を用いることで従来技術では実現が困難とされていた繰り返し周波数10 MHz以下の繰り返しを達成できた.また共振器はPMFを用いて構築しているため,耐環境性に優れており,3時間における平均出力安定性を計測した結果,出力変動は約0.5%以内であり,これは市販のレーザーの図2.出力スペクトル 図3.圧縮後のパルス幅 図4.パルストレイン − 275 −

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