2.酸化ランタン・タングステン合金の特性調査 純タングステンの再結晶温度は純度に依存するが,1500K~1800Kと言われている.従って,1800K程度ではより急激に粒成長が進むことが知られている.過去にレーザ溶融法による3次元積層造形により純タングステンの試作を試みた結果,レーザ加熱により幅100μm程度の柱状の粗大結晶が観察され,これに伴い相対密度,強度ともに低い値に留まった.すなわち,ガス温度2000Kを達成するヒータの実現には,結晶の粗大化を抑制し,強度の改善を図る必要がある. 図2■ドープによる粒成長の抑制 1・2 研究目的■結晶粗大化の抑制の方策として,合金化,すなわち図2に示すように高温でも安定な物質をタングステン中にドープし,結晶粒界に分散させることで粒成長を抑制することが考えられる.これにより,粗大化と再結晶の抑制により,強度の向上が期待される.本研究では,純タングステンへのドープ物質として酸化ランタン(La2O3)を選定し,添加の効果を調査する.開発を通し,高品位の合金粉の製作工程,最適なレーザ溶融条件を見出し,広くレーザプロセッシング分野に貢献する.獲得した技術により薄肉・多層ヒータを実現し,高性能な宇宙用エンジンの他,広く産業利用可能な高効率の超高温ヒータを提供する. 図3■作製したタングステン・酸化ランタンドープ粉末の2・1 酸化ランタンドープ粉末の作製■まずタングステンへのドープ材としての酸化ランタンを選択し,タングステン・酸化ランタンドープ粉末の作製に取り組んだ.作製方法として,A焼結,B緻密化焼結,C緻密化焼結後に酸素除去,以上3通りの手法を採用した.作製した粉末のSEM画像を図3に示す.まず500倍の像から理解される通り,Aでは焼結することなく残存した原料粉が多数存在しており,かつ焼結されたものに関しても粒径のばらつきが大きい.一方,B,Cではこれらの改善が見られる.次に2000倍の像を確認すると,Aでは粉末が原料粉の形状を留めたまま不完全に融着しており,形状も凹凸がありボイドも多く見られる.一方,B,CはAに比べ凹凸やボイドが改善されていることが確認された.酸素除去を施したCは最終的な酸素含有量が減少できており,合金化の際の粒界への析加熱後の加熱前の粒界粒界ドープ物質図4■レーザ走査速度とハッチ幅の変更に伴う造形品のボイドへの影響 SEM像 − 255 −純タングステンタングステン合金
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