の強度が高いほど加熱によってガラスの粘性が低下しており、二段延伸後のガラス管の直径はレーザー光強度にほぼ線型に減少することが分かる。1.6Wを越える照射強度ではガラスの粘性が下がりすぎてしまい、延伸する前にガラス管が切断されてしまった。切断しないぎりぎりのレーザー光強度に調節しながら二段延伸すると、1µmを切る直径まで微細化することができた。二段延伸の最中にレーザー光強度を上げると、より細いガラス管が得られることが分かった。1Wの強度から二段延伸を開始し、延伸が完了する5秒程度の間に7Wまで徐々に強度を上げると、外径が400nmのガラス管が得られた。図6は、外径400nmのガラス管の内部が確かに管の形状を保っているか確認するために、ガラス管内部に単層カーボンナノチューブの分散溶液を導入し、側方からの励起/散乱光検出によって取得したラマンスペクトルである。400nmの細部からでも確かに、単層カーボンナノチューブ由来のGバンド(1580 cm-1)のピークが明確に検出された。このことから、サブミクロンの直径まで微細化しても確かに中空の形状が保たれていることが確認できた。図6ff■■内部に単層カーボンナノチューブ溶液を導入した直径■■■■■のガラスチューブの光学顕微鏡写真と、ff■■内部のカーボンナノチューブから取得したラマン散乱スペクトル ・ ガラスキャピラリー内部の金属ナノ粒子による修飾微細なガラス管の内部を金属で均一に修飾する簡便な方法として、延伸前のガラス管の内部に金属を封入し、ガラスと一緒に加熱・延伸して金属ごと引き延ばす方法を試みた。もとの内径1.1mmのガラス管の内部に、直径1mmの銀のチューブを挿入し、前述と同様の方法でレーザー光照射によって加熱し、一軸電動ステージで延伸した。この方法では、ガラスのみが加熱されて銀のチューブはもとの形のまま変化せず、ガラス管が切断されてしまった。これは、ガラスの熱伝導率が低く局所的な加熱が可能である一方、銀の熱伝導率が高く、銀の融点である960℃まで加熱されることなくレーザー照射されていない部分に熱が逃げてしまうことが原因と考えられた。そこで、レーザー光のビーム径とほぼ等しい約2mmの長さに銀のチューブを切ってガラス管の中央に配置し、銀のチューブがある部分を狙ってレーザー光を照射し、延伸を行った。また、銀の融点が960℃とシリカガラスのガラス転移温度よりも高いことから、レーザー光を15Wの強度で3秒間照射して予備加熱したのちに電動ステージを駆動した。延伸後のガラス管を光学顕微鏡で観察した結果を図7に示す。光学顕微鏡像から測定したガラス管の外径は50µm、内部の銀の外径は25µmであった。この結果から、銀をガラス管に導入したまま加熱・延伸するという当初の着想は実現可能であることが示された。一方、(1)金属を導入するとガラス管の直径の縮小率が低下したこと、(2)銀がガラスの管形を詰まらせてしまうこと、の課題が残っている。また、これをさらに二段延伸する実験も今後の課題である。図7内部に銀チューブを封じたまま加熱延伸して微細化したガラス管の顕微鏡写真銀チューブを導入したガラス管をレーザー加熱・延伸する方法とは別に、ガラス管を延伸した後に内部を金属ナノ粒子で修飾する方法を着想した。本研究で得た最小内径が400nmで、一方長さは10cm程度あり、この内部を均一に金属で修飾するためには、ナノサイズの金属微粒子を管の内部に導入して定着させる方法を模索しなければならないように考えられたが、深いガラス管の内部までの金属ナノ粒子の流動性の確保や固定の困難があった。そこで本研究では、ガラス管の内部に金属イオンの水溶液を導入し、紫外線照射あるいは還元剤によって金属内部で還元反応を誘起する方法を着想した。金属イオンの溶液は、ガラス管の先端をその液面に触れるだけで、毛細管現象によって自動的に管の内部に侵入し均一に満たすことができた。実験では、よく知られる銀鏡反応を用いた。まず硝酸銀水溶液にアンモニアを加えて錯イオンとして安定化させた。グルコースを還元剤として加えた後すぐに、ガラス管をその液面に接触させて管内部に導入した。そのまま2〜3時間放置すると、金属イオンの還元反応はガラスの表面で種結晶を析出し、その場で粒子がお互いに妨害することなく成長して管の内壁が銀ナノ粒子で均一に修飾された。図8は、そのようにして作製した銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡像と白色散乱スペクトルである。平均約■■■■程度の大小様々な銀ナノ粒子が形成されていることが分かる。散乱スペクトルで■■■■■を中心として■■■〜■■■■■の可視光のほぼ全領域をカバーするように局所プラズモンの共鳴が生じていることからも、形成された銀ナノ粒子が様々なサイズ、形状で、配列されていることを示している。− 251 −
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