キーワード:金属/ガラス複合材料、局所プラズモン共鳴、ガラス転移 ためのスキャフォールド構造やマイクロ流路など、微細構造が複雑に入り組んだ2次元/3次元構造は、その重要性がますます高まっており、様々な材料に対して高精度かつ簡便に微細構造を作製するレーザー加工は、さらに高い加工精度が求められている。2光子加工法に代表されるように、光の回折限界を超えて、波長よりも細かな構造を精度良く加工する技術が要求されている。筆者はこれまで、2光子加工法を用いたナノ加工技術の研究を、単層カーボンナノチューブ/ポリマーコンポジットや、金ナノ粒子/ポリマーコンポジットなどの複合材料へ展開し、新しい工学的・力学的性質を付加した機能性ナノ構造の作製を行った。研究の過程で申請者の2光子加工法の加工分解能は■■■■■以下に達し、これ以上の加工分解能の向上には、非線形光学応答や顕微鏡光学系の改良とは異なる、全く新しい原理の導入が必要であるレベルに至った。■筆者は、実験で日頃行っていた単純なガラス細工や、興味のあった飴細工にヒントを得て、レーザーで描画する手法とは全く異なる加工技術の着想に至った。所望の構造を何倍も大きなスケールで作製し、それをレーザー光照射と力学的応力印加によって縮小することで、微細構造を形成する、というアイデアである。飴細工は、もともと直径■■■■ほどのサイズで断面に模様ができるように色を配し、それを繰り返し延伸することによって直径■■■ほどの飴に微細化する。原理的には、延伸する回数をさらに重ねることによって断面構造を正確に保ったままどこまでも縮小化できることになる。レーザー光の照射によって材料の粘性を制御し、延伸すれば、局所的な延伸・縮小化も可能であり、もとの構造のサイズに関係無くミクロ/ナノスケールまで縮小できる超微細構造作製の新しい原理となるのではないかと考えた。■■以上の背景から、本研究では、レーザー光の照射によって、ガラス材料の粘性を局所的に低下させる。その後、力学的作用の印加によって材料を延伸することで、材料を縮小することで構造をナノスケールまで微細化する新規レーザープロセシング技術を得ることを目的とした。主な母材としてチューブ型シリカガラスを用いた。また、金、銀などの金属をガラス管の内部に配置することによって、ガラス内部をナノスケールの金属粒子で修飾し、局所プラズ1.研究の目的と背景 ■近年、フォトニック結晶やメタマテリアル、再生医療の電気通信大学■情報理工学研究科■基盤理工学専攻■( ■ ■年度■一般研究開発助成■■■■ ■ ■ ■■■■) 准教授■庄司■暁■モン共鳴に基づく光学的機能の付加を試みた。金属ナノ構造は、可視光の波長域でプラズモン共鳴を示す■■■■■かそれ以下のサイズに微細化することを目指した。さらに、レーザー光照射と延伸を、複数回繰り返すことによって、ミリ〜センチメートルレベルでデザインし作製した断面構造をサブミクロン〜ナノスケールの極限までにスケールダウンする技術を開発した。■さらに、本技術で作製した金属/ガラス複合ナノチューブを用いた高感度分子センサーの試作を行った。分子センサーは表面増強ラマン分光を原理とする。ナノチューブは、試料の容器とラマン散乱スペクトルの導波路との役割を同時に果たし、ピコリットルレベルのごく少量の試料から高感度に分子分析する技術へ応用を行った。■■ 2.実験方法 ■ ・■■レーザー光照射と応力印加によるマイクロ/ナノガラスキャピラリー作製法の開発■■ガラスキャピラリーはWPI社製Glass capillary TW-150で、外径1.5mm、内径1.12mmのホウケイ酸ガラス製である。炭酸ガスレーザー(波長10.6µm、ビーム径2.4mm、出力15W)からの光をガラスキャピラリーの側方から入射した。ガラスキャピラリーの一端は電動回転ステージに固定し、全方向からまんべんなく光照射すると、照射された部分が局所的に過熱され、約1秒間の光照射によってガラス管はガラス転移温度の約560℃を越え、急激に粘性が下がった。キャピラリーのもう一端はテグスを経由して電動の一軸リニアステージに連結し、一定速度でキャピラリーに張力を加えて延伸した。 まず、延伸用の一軸電動ステージの駆動速度を変えたときに得られたガラス管の長さと外径の関係を図1、図2に示す。当初の予想通り、延伸速度が速い方が長く細いガラス菅が得られた。結果を詳細に考察すると、長さは延伸速度にほぼ正比例の関係であるのに対して、ガラス管の外径は延伸速度を変えても外径はほぼ20µm〜30µmで、最も細いガラス菅でも10µm程度であった。当初、延伸速度を高めることによって容易にガラス管の微細化が可能であると想像していたが、この結果から単に延伸速度を変えるだけでは10µmを越えて微細化することが困難であることが分かった。図3は、延伸後のガラス管の断面を電子顕微鏡で観察した結果である。外径は20µm、内径は− 249 − レーザー光照射と応力印加を用いた金属/ガラス複合材料の ナノ構造形成法の開発
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