1.研究の目的と背景キーワード:光渦,レーザーアブレーション,ナノ・マイクロ粒子レーザーアブレーションとは,レーザー光を物質に照射した際に瞬間的に物質が蒸発・プラズマ化する現象であるが,この現象は表面掘削,切断,穴あけといったいわゆる材料加工から,極端紫外光生成,薄膜堆積などさまざまな技術に応用されている.また,レーザーアブレーションの際の熱的効果によってドロップレットが生成・放出される場合もある.我々は,このドロップレットから結晶粒子が合成されることを見出し,これまでに大気中にて■■や■■■といった半導体に■■■■■■レーザーを集光照射することでマイクロ結晶粒子を合成することに成功している1).さらに,■■■マイクロ結晶粒子に関しては光励起による紫外ウィスパリングギャラリーモード(■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■)レーザー発振を実証している.本手法は原理的に光吸収をもつあらゆる物質に適用できるうえ,ターゲットの急速な加熱・冷却過程を利用することでさまざまな半導体や合金,不純物添加結晶粒子の合成が期待できる.実際のところ,不純物元素を含んだターゲットを用いることで不純物添加■■■マイクロ結晶粒子の合成を達成し2),■型電気特性や■■■レーザー発振波長の短波長化を実証した.一方で,従来のレーザーアブレーション図1集光する光渦レーザー光においてff■■イメージセンサで取得・解析した位置図および各取得位置のff■■強度分布,ff■■楕円率,ff■■アジマス角.九州大学大学院システム情報科学研究院( ■ ■年度一般研究開発助成■■■ ■ ■ ■■■■)准教授中村大輔応用では光の波長・強度分布・パルス幅が主に重要視されており光の幾何学的位相・偏光の活用は未開拓な状況である.その中で近年,螺旋波面をもつ光波(=光渦)によるツイストニードルの創製3),ドロップレット直線飛翔4)など従来のレーザー光では実現できない微細加工現象が発見され,新たなレーザープロセス技術の進展が重要視されている.ところが,光波の幾何学的位相や偏光が物質加工に与える効果は未解明な点があるうえ,現在の研究の主な関心は加工後の表面形状であり,加工過程や放出粒子に関する研究は少ない.そこで,本研究では光渦レーザー光源を構築し,物質加工における光渦と物質との相互作用を解明し,新しいレーザー微粒子合成技術の開発を目指して研究を行った.実験では光渦変換に使用する光学系による想定しない偏光の歪み等が生じる可能性も十分に考えられるため,光渦と物質の相互作用を理解するためには光波の実測評価が重要となる.その点も考慮し,具体的には発光する半導体を主な対象として,(1)幾何学的位相と偏光を独立に制御可能な光渦レーザー光源の構築と光波の実測評価,(2)機能性ナノ・マイクロ粒子合成,(3)円環状強度分布レーザー加工現象の理解のための 次元輻射流体シミュレーション,(4)光渦を駆使したマイクロ粒− 245 −光渦レーザーを用いた機能性ナノ・マイクロ粒子合成技術の開発
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