図4■銅とアルミの加工痕のSEM画像(パルス幅400fs)下段は上段の赤枠箇所を高倍率で観察した画像である. 場合,パルス幅が長くなると,熱影響による溶融再固化の痕跡とみられるリムが顕著に発生していることが分かる.一方,銅の場合はそれほど顕著には見られなかった.これらの違いは熱伝導率の違いに起因すると思われる. ■・ ■金属の穴あけ加工における繰り返しレート依存性 ■次に,銅とアルミの穴あけ加工における繰り返しレートに対する広域連続的な依存性を調べた.照射条件は前節と同様で,繰り返しレートを100 Hzから1 MHzまで変化させた.図3にパルス幅400 fs,10 ps,200 psにおける加工レートの繰り返しレート依存性を示す.銅では3種類のパルス幅において,繰り返しレートにほとんど依存しない結果が得られたのに対し,アルミでは400 fsと10 psにおいて,繰り返しレートに対して加工レートが増加する結果が得られた.先行研究では,主に100 kHz~1 MHzの繰り返しレートにおいて,蓄熱効果による加工レートの増加とプルームのシールド効果による加工レートの減少が報告されている.本研究の結果では,アルミにおいて高繰り返しでの加工レートの増加が見られたが,銅においては見られなかった.アルミに比べて,銅の熱伝導率が高いためと考えられる.一方で先行研究に比べて低繰り返し領域(1 kHz程度)から増加が見られることや長パルス(200 図3■銅とアルミの穴あけ加工における各パルス幅での加工レートの繰り返しレート依存性 ps)では増加が見られないことは単純な蓄熱効果だけでは説明できず,他にも要因があると考えられるが、詳細はまだ明らかではない. ■次に,繰り返しレートに対する加工品質への影響を調べた.加工痕を光学顕微鏡で観察したところ,低繰り返しでは加工痕周囲に変色が見られた.この原因を探るために,SEM観察を行った結果を図4に示す.銅では10 kHz,100 Hzの低繰り返しでデブリの増加が見られた.アルミでは10 kHzでデブリ量が極大となり,粒径数ミクロンのデブリも見られた.変色の傾向と符合しており,変色の原因はデブリであると考えられる.エネルギー分散X線分光法(EDS)による元素分析を行った結果,デブリの多い条件では酸素濃度の増加が見られたため,酸化物のデブリが生成して堆積したと考えられる.繰り返しレートによってデブリの発生量が変わる理由については明らかではない.粒子が発生し飛散する時間スケールと後続パルスとの間隔の時間スケールに関係していると考えられるが,詳細についてはさらなる実験的検討を要する. CuAl■・■■ガラスの穴あけ加工におけるパルス幅依存性 ■次に,ガラスの穴あけ加工におけるパルス幅依存性を調べた.ガラスとしては,光学材料としてよく用いられるシリカガラスと工業的に重要な無アルカリガラスのEagle■XG(Corning)を対象とした.照射条件は前節と同様であるが,集光直径は35 µmである.パルス幅を400 fsから200 psまで,平均フルーエンスを0.1 J/cm2から5.2 J/cm2まで変化させたときの加工レートのマッピングを図5に示す.いずれのガラスでも長パルス領域では加工が起きなかった.レーザー波長に対して透明な材料では非線1 MHz10 kHz1 MHz10 kHz100 Hz100 Hz− 242 −
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