3種類の金属すべてにおいて,短パルス領域ではパルス幅が長くなるにつれ,加工レートが減少していく様子が見SUS304表1各種金属の熱伝導率31)金属の種類アルミニウム加工レートのパルス幅依存性ff■■銅・アルミの加工痕の■■■画像熱伝導率(W/mK)394222163.研究成果ス圧縮器の回折格子を自動ステージに載せ,回折格子間隔を自動制御することにより,パルス幅の3桁広域可変性(400 fs~400 ps)を実現している.この時間領域は,物質依存が大きい電子格子相互作用の緩和時間が分布する領域であり,パルス幅による熱影響の違いが顕著に現れ,興味深い時間領域である.また,最終増幅器の後には音響光学変調器を設置し,パルスエネルギー・ショット数・繰り返しレートの制御を行った.パルスエネルギーは2桁の範囲で,ショット数はシングルから無限まで任意に,繰り返しレートは1 MHzの任意分数周波数で可変制御可能である29).パルス幅・パルスエネルギー・ショット数・繰り返しレートのパラメータと,照射系のガルバノスキャナーやサンプルステージはすべて,単一のプログラムから制御可能になっており,任意の手順でパラメータを可変しながら,所望の位置に所望の形状の加工を自動的に行うことができる.マトリックス状にパラメータを変えながら照射することにより,データ収集を自動で行うことができる30).マトリックス状に照射すれば,市販のレーザー共焦点顕微鏡で3D形状を自動測定できる.測定した多数の形状データから加工痕の深さと除去体積を自動解析するPythonのソフトウェアを開発した.これにより,例えばパルス幅25条件×パルスエネルギー18条件の計450条件でのパーカッション加工における除去体積のデータを加工20分・計測8時間・解析30分の計9時間程度で収集することができる.■・■金属の穴あけ加工におけるパルス幅依存性産業部材として多く用いられる3種類の代表的な金属である銅・アルミニウム・ステンレス(SUS304)への穴あけ加工を行い,パルス幅に対する広域連続的な依存性を調べた.レーザーの波長は1033 nm,繰り返しレートは1 MHzであり,焦点距離100 mmのfθレンズを通してサンプル上に集光した.集光直径は42 µm,平均フルーエンスは2.2 J/cm2であり,100ショットを照射した.パルス幅を400 fsから200 psまで変えて照射し,加工痕の3次元形状をレーザー共焦点顕微鏡で測定した.3次元形状をもとに計算した加工レート(除去体積をショット数で除した値)を図2(a)に示す.られた.このことは,アブレーション閾値が増加していることに対応している.先行研究によると,パルス幅が長くなると,深部への熱拡散によってエネルギーが散逸するため,アブレーション閾値が増加すると考えられる8).詳細に見ると,銅の場合はパルス幅の増加とともに200 psに至るまで加工痕の体積が単調に減少を見せているのに対し,アルミやステンレスの場合は体積の極小点が存在している.これらの金属は熱伝導率(表1)が大きく異なり,図1パラメータ自動可変レーザー加工装置の概略図図2ff■■銅・アルミ・ステンレスの穴あけ加工におけるパルス幅依存性の違いに熱伝導の影響が関係していると推察している.また,パルス幅による加工の様子の違いを見るために,走査型電子顕微鏡(SEM)による加工痕の詳細な観察を行った.図2(b)は,銅とアルミにおいて,異なるパルス幅に対する加工痕のSEM 観察像を示している.アルミの銅CuAl30 ps400 fs200 ps− 241 −(a)(b)
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